「従業員に監禁されるかも!?」シチズン子会社も“合法的夜逃げ”に走った中国日系企業の現在
#中国
2月5日午後、広州にあるシチズングループの中国子会社「西鉄城精密(広州)有限公司」が突然、約1000人の全従業員との労働契約を解除し、工場を閉鎖すると通知した。「東方早報」によると、寝耳に水の従業員たちはあっけにとられ、一部が会社の担当部門に説明を求めに走ったが、担当者は「何も分からない」と回答。納得のいかない従業員らにより、デモが勃発した。
シチズン側の説明によると、今回の広州工場の閉鎖は、本社が推し進めている構造改革の一環で、戦略的縮小調整を目的とするもの。事前に解雇通知を出さなかったのは、従業員たちの仕事に対する士気に影響が出ないようにするためと説明した。また、従業員に対しては、労働法に従い、経済補償をしていくつもりだという。
10日時点では、約1000人の従業員のうち、9割以上が解雇に同意したというが、いまだ彼らの間には不安も漂っている。勤続5年半になるという男性従業員は、同紙の取材にこう話している。
「16~7歳の頃から、ここで働いていた。突然、こんなことになってしまって、本当にショック。会社が私たち労働者に、納得いく賠償をしてくれるか分からない」
一方、シチズンの撤退について「うらやましい」と話すのは、広東省でプラスチック成形工場を営む日本人男性だ。
「人件費や地代、原料費が高騰し、円安人民元高の中、中国でモノを作るメリットはもはやまったくない。しかし、中国の労働法では、従業員を解雇したり会社を閉鎖する場合、告知後1カ月分の給与と、勤続年数1年につき1カ月分の給与を支払わなくてはならず、うちみたいな零細企業にとって大きな負担で、おいそれと撤退もできない。うちも含め、仕方なくジリ貧状態で操業を続けている日系メーカーは少なくないんです」
また、寝耳に水の閉鎖・全従業員の解雇になったことについて、中国事情に詳しい奥窪優木氏はこう話す。
「解雇や閉鎖を前もって通知した場合、従業員が徒党を組み、少しでも多くの補償金をせしめようと、幹部や経営者を監禁するという事件も起きている。労働争議で稼ぐ弁護士が従業員に接近し、話がややこしくなることもある。労働法にのっとった補償金さえ払えば、夜逃げ同然で会社を畳むのが一番賢明といわれている。いわば合法的夜逃げです」
中国の物価上昇や為替変動のほか、種々のチャイナリスクも懸念される中、外資系企業に同様の動きが広がる!?
(文=井上嘉久)
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