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アカデミー賞にも6部門でノミネート イーストウッド最新作『アメリカン・スナイパー』

JP-photomain-rev2-ASNPR.jpg『アメリカン・スナイパー』(c)2014 VILLAGE ROADSHOW FILMS (BVI) LIMITED, WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

 今週取り上げる最新映画は、戦争ジャンルで米興収歴代1位を達成したイーストウッド監督の話題作と、リアルな復讐劇がカンヌの国際批評家連盟賞など高い評価を受けた新進監督の注目作。日本で「戦争」「暴力」「報復」をめぐる言論と世論が活発化している今、これら2作品を見て、現実の悲劇により深く想いを寄せることも有意義だろう。


 『アメリカン・スナイパー』(2月21日公開、R15+指定)は、9・11以降のイラク戦争で活躍し米軍史上最強とうたわれた狙撃手の実話を、クリント・イーストウッド監督、ブラッドリー・クーパー主演で描く戦争ドラマ。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの狙撃兵クリス(クーパー)は、市街戦が続くイラクに派遣され、高い精度で敵兵を次々に射抜く。多くの仲間を救い「レジェンド」の異名を轟(とどろ)かせる一方で、敵からは懸賞金がかけられ命を狙われる。クリスは4度の派遣で160人もの敵を射殺し、遠征から帰れば良き夫、良き父でありたいと願うが、安らぐことのない精神状態に苦しみ続ける。

 冒頭でいきなり、不審なイラク人少年とその母親を狙撃するべきか否か、難しい判断を迫られる主人公。この映画が単純な「悪の敵兵を大勢やっつけた英雄」の物語ではなく、途方もない精神的プレッシャーの下で人命を奪う兵士の内面に切り込むドラマだと宣言する幕開けだ。イラク側狙撃手とのライバル関係も、西部劇のガンマン同士の対決を思わせる緊迫感があり、ガンファイターを数多く演じ『許されざる者』(1960年)の監督・主演でオスカーを獲得したイーストウッドの手腕がさえる。本国アメリカでは1月中旬に封切られ、これまでに興収2億8000万ドルを超えイーストウッド監督作で最大のヒット、また戦争映画ジャンルでもスピルバーグ監督の『プライベート・ライアン』(88年)を抜いて米興収歴代1位を達成。今年のアカデミー賞にも6部門でノミネートされ、作品賞、クーパーの主演男優賞などの受賞が有力視されている。日本でも大きな話題となるのは確実だ。

 『ブルー・リベンジ』(2月14日公開)は、2013年のカンヌ国際映画祭で国際批評家連盟賞を受賞した新感覚のスリラー復讐劇。サビだらけの青い車に寝泊まりし、世捨て人のように生きていたドワイトは、かつて両親を殺した男が近く出所することを顔見知りの警官から知らされる。復讐心に突き動かされ、ドワイトは男が刑務所から家族のリムジンで移動するのを尾行し、一家が入った店のトイレに忍び込んで男を刺殺する。だがこれは、ドワイトと犯人一家の壮絶な復讐合戦の始まりに過ぎなかった。

 監督・脚本は、本作が長編映画2作目の新鋭ジェレミー・ソルニエ。スタイリッシュとは対極にある、ミス連発でヘタレ感漂う主人公の描写が抜群だ。盗んだ銃の錠を叩いて外すつもりが銃ごと壊してしまう、追跡されないようリムジンのタイヤをナイフで刺したら手を切る、脚に刺さった矢を自分で抜こうとするが痛すぎて病院に駆け込む、といった具合。特別な訓練も経験もない普通の男が相手を殺すつもりで戦えば、きっとこうなるというリアルさを醸し出すと同時に、この手のジャンル映画のユニークな批評にもなっている。はっとさせられるバイオレンス描写と、「破滅」を予感させる青を強調した映像も、本作の大きな見どころだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『アメリカン・スナイパー』作品情報
<http://eiga.com/movie/81224/>

『ブルー・リベンジ』作品情報
<http://eiga.com/movie/81296/>

最終更新:2015/02/13 23:00
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