トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > カルチャー  > 観客の目の前でおたふくと天狗が合体! 全国各地の奇祭に見る、日本人のルーツとは

観客の目の前でおたふくと天狗が合体! 全国各地の奇祭に見る、日本人のルーツとは

02-ushinori.jpg秋田県<「牛乗り・くも舞」

――この祭りは、スサノオ伝説にもとづいて豊漁と疫病退散を祈願しているといわれていますが、意識不明になった「牛乗り人」のビジュアルには、何やら恐ろしいものを感じますね……。

杉岡 宗教の根源を見た、という感じがしましたね。ネイティブアメリカンにも、幻覚サボテンを使って神の幻覚を見るという儀式がありますが、宗教の発生には陶酔や幻覚が深く関わっていると思います。そんな根源に触れられるお祭りです。

――奇祭というと、全国各地に男性器が登場する性の祭りもたくさんありますね。そもそも、盆踊りも乱交のために行われた踊りだったという説が有力です。

杉岡 性の祭りの中でもとりわけすごいのが、奈良県の飛鳥坐神社で行われている「おんだ祭」です。この祭りは、古文書なども残っておらず、いつから行われているのかも不明なのですが、神社の舞台上でみんなが見ている中、おたふくと天狗が性行為を演じるんです。

03_onda.jpg奈良県「おんだ祭」

――天狗がおたふくの足を開き、腰を動かして……。生々しすぎます!

杉岡 ただ、全然色っぽいものではありません。一緒に登場する翁が舞台を走り回ったり、行為中の2人にちょっかいを出そうとしたりと、コミカルなんです。子どもたちも祭りを見学していますが、「お母ちゃん、あれなに?」って質問していますよ。

――子どもに見せるには、ちょっと問題があるんじゃないでしょうか?

杉岡 大丈夫ですよ! そもそも、昔は百姓なんてごろ寝をしていたわけですから、子どもの頃から親の営みを見ていたはず。全然問題はありません。かつては、こうやって性の知識を身につけた子どもたちが、15歳になったら夜這いに行っていたんです。フリーセックスというと言い過ぎかもしれませんが、日本人のエロに対する視線は、今考えるよりもはるかに緩かったんです。

――地域ごとに、エロい祭りの傾向なんかはあるのでしょうか?

杉岡 なぜか、愛知県にはエロい祭りが多く残されているんです。巨大な男性器神輿を担ぐ田縣神社の「豊年祭」や、女性器をモチーフにした「姫の宮まつり」などが有名ですね。

――う~ん、愛知県の人は、とりわけエロい県民性なのでしょうか?

杉岡 それはわかりませんが……。

――いったい、なぜ日本にはこんなにたくさんの奇祭があるのでしょうか?

杉岡 日本には、30万もの祭りがあるといわれています。八百万の神がいる多神教の国だから、たくさんの祭りが必要なんですよ。また、世界的には祭りが弾圧され、禁止されてきた歴史があります。民衆が集まっていると一揆や革命の危険性から弾圧がなされるんですが、日本には、そういった取り締まりが少なかったから残っているんでしょうね。明治時代には「盆踊り禁止令」なんかも出されましたが、それでも他国に比べるとまだ寛容だったんです。

――ところで、杉岡さんは、なぜそこまでして奇祭を追い求めるのでしょうか?

杉岡 僕自身、シュルレアリスムの絵画のように、この世からかけ離れたものが好きなんです。異次元の世界を見ることができるのが、奇祭の魅力でしょう。本のあとがきにも書きましたが、別世界に連れて行ってくれる奇祭は、僕にとって「アート」なんです。

――「奇祭はアート」というのは、すごい視点ですね。奇祭を眺めていると、今まで日本の伝統と思っていたものが覆り、また別の日本の姿が見えてくるようにも感じます。

杉岡 昔から、日本人は真面目でも厳粛でも貞節でもなく、アホでスケベでくだらないことをしてきました。お祭りも「宗教行事」なんていうのはたいていはお題目でしかなく、単に酒が飲みたい、暴れたい、セックスしたいという欲望が根源にあったと考えています。そんな日本人のルーツが、奇祭から見えてくるんです。
(取材・文=萩原雄太[かもめマシーン])

最終更新:2015/12/11 15:42
12
ページ上部へ戻る

配給映画