観客の目の前でおたふくと天狗が合体! 全国各地の奇祭に見る、日本人のルーツとは
#インタビュー
男性器の神輿をかつぐ川崎市の「かなまら祭り」、神主に大根を投げつける千葉県の「あらい祭り」、藁でグルグル巻きにされた男が運ばれていく大田区の「水止舞」など、全国には「奇祭」と呼ばれる祭りがひしめき合っている。そこには神に奉納するための厳かな儀式などではなく、この上なくシュールで思わず笑わずにはいられない現実が展開されているのだ。
杉岡幸徳氏は、そんな「奇祭」に魅せられ、これまで全国各地で数百に及ぶ奇祭を訪れた人物。昨年にも『大人の探検 奇祭』(実業之日本社)を上梓し、21カ所の奇祭のレポートを行っている。そんな杉岡氏にとって、奇祭の魅力はいったいどんなところにあるのだろうか? そして、長年の奇祭フィールドワークから見えてきた「日本人の姿」とはどのようなものだったのだろうか?
――まず、杉岡さんが奇祭に魅せられた経緯を教えてください。
杉岡幸徳氏(以下、杉岡) もともと、ある雑誌で普通のお祭りのレポートを連載していたんですが、あまり普通の祭りには興味がなかったんです。しかし、調べていくうちに、日本には「変な」祭りが数多くあることに気が付きました。今でこそ、奇祭という感じがしませんが、秩父に「鉄砲まつり」という祭りを見に行ったのが奇祭の初体験です。神社の参道を馬が駆け上がるのに合わせて、火縄銃が空に向かってぶっ放されるんですが、普通のお祭りだと思って見に行った身にとっては異常ですよね? そこから徐々に奇祭に足を踏み入れていったんです。
――これまで見た中で、杉岡さんがいちばん衝撃を受けたお祭りは?
杉岡 やっぱり、青森県の「キリスト祭り」ですかね。
――青森でキリストですか……?
杉岡 はい。青森県の新郷村に「キリストの墓」といわれる場所があるんです。そこで毎年「キリスト祭り」が行われ、地元の人による盆踊りが行われます。日本にキリストの墓があるということもおかしいし、神主がキリストの墓の前で「払いたまえ清めたまえ」と祝詞を唱えるのもおかしい、盆踊りの歌詞がヘブライ語に由来しているといわれているのもおかしい……。おかしいものだけを集めて一つにしたようなアンバランスな魅力があり、端的に言うと異次元空間が広がっているんです! 僕が足を運んだ10年ほど前には、数十人くらいの観客しかいなかったんですが、最近は大人気になっているみたいですね。
――青森にキリストの墓が存在していたら、世界史の常識が覆ってしまいますが……。
杉岡 しかも、現地の人も、あんまりこの伝説を信じていないようです。民宿の人が言っていたんですが、周辺にはキリスト教徒もいない。また、祭りの最中にはキリスト伝説が披露されるのですが、「本当かどうかはどうでもいいんです!」と力説していました。
――誰もキリスト教を信じていないのに、祭りが行われているんですか!?
杉岡 あとは、「牛乗り・くも舞」もすごい! 秋田県潟上市で行われているお祭りなんですが、意識不明の男が牛の上に乗っている。こんなものが現代日本にあっていいのか……と仰天しました。
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事