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日刊サイゾー トップ > エンタメ  > 『R-1』優勝しても売れないのか

祝優勝!じゅんいちダビッドソンは「『R-1』優勝しても売れない」を覆せるか

 それをさらに後押ししたのが、「R-1」の審査システムが変わったことだ。「R-1」の審査は毎年のようにマイナーチェンジが行われる。今年は敗者復活戦が導入された。しかも、決勝進出者9人に対して敗者復活者が3人もいるという異例の事態。そして、審査員は5人に絞られ、視聴者によるデータ投票も導入された。これらの改革によって、従来とはシステムが大きく変わり、勝ち方がはっきり見えなくなった。つまり、「審査員にハマれば勝ち」という一元的な基準がなくなり、緊張感のある真剣勝負という雰囲気が薄れてきたのだ。

 今までは、真剣勝負としてさんざん煽りたてることで、かえって結果に納得がいかない視聴者からの反発を生んだり、そこで勝った人がなぜ売れないのか、評価されないのか、といった不平不満を引き起こしていた。今年のシステムではその感じがかなり薄れている。準決勝で敗れた芸人が敗者復活で勝ち上がる可能性も残されているし、決勝の審査は審査員と視聴者の両者で行われるので評価が偏りにくい。そのあいまいさこそが、気楽に楽しめる大会の空気を作っていた。

 出場者の顔ぶれもバランスが良かった。ピン芸人として名の知れたエハラマサヒロ、あばれる君に加えて、前年王者のやまもとまさみもいた。そして、年末年始のお笑い系特番で活躍していた厚切りジェイソン、とにかく明るい安村のような注目株も出ていたし、ゆりやんレトリィバァ、マツモトクラブという新世代芸人の活躍も見応えがあった。結果的に優勝をさらったのは昨年プチブレイクしていた、じゅんいちダビッドソン。本田のものまねキャラでありながら、単なるものまね芸にとどまらず、ネタそのものをしっかり作り込んできたことが勝因だろう。

 そもそも、優勝者が売れるという神話も、真剣勝負の緊張感も、「R-1」という大会や番組そのものが面白くなるために本質的な部分ではない。「R-1」とは、視聴者目線でいえば、単に「面白くて上質なピン芸がたくさん見られる特番」であるにすぎない。そして、それが一番のセールスポイントでもあるのだ。大量生産・大量消費の一発芸的なネタを見たいなら「コストコ行ってこい!」。「R-1」には、徹底的に作り込まれた極上のピンネタが揃っている。危機的状況から土俵際の粘りを見せた今年の「R-1」は、大会の原点に立ち返るような満足度の高いイベントだった。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)

最終更新:2015/02/12 11:12
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