事故件数は日本の2倍、警察は捜査能力ゼロ……“安全後進国”韓国のキケンな交通事情
#韓国
「大好きなケーキの代わりに、クリームパンを買ってきたよ。ごめん……」
この言葉は、韓国のとある教育大学を主席卒業しながら、妻のためにトラックの運転手になった20代男性A氏が、最期に残した言葉である。
1月15日、A氏は妊娠7カ月の妻のために、少ない収入の中からクリームパンを買い、帰り道にトラックにひかれて亡くなった。この事件は韓国で「クリームパン・アッパ(パパ)・ひき逃げ事件」として大きく報道された。
注目を集める事件だけに警察も大々的な捜査に乗り出したが、その成果は芳しくなかった。見かねたネットユーザーたちは、自ら容疑車両の追跡を開始。27日に車種が特定され、犯人が自首することで幕を下ろした。
ネットユーザーの活躍が注目される一方で、この事件は警察の捜査能力の低さを証明する結果にもつながった。韓国の交通事故率は高く、道路交通公団の統計によれば2013年の交通事故は合計111万9,280件に達し、死亡者は5,029人、負傷者は178万2,594人にも上る。同年、日本の交通事故件数が62万9,021件(警察庁交通局発表)だったことを考えると、日本の約2倍の事故が起こっている計算になる。
しかし、14年になると状況は改善の兆しを見せ始めた。韓国の国土交通省の発表によると、交通事故での死亡者数が4,800人に減少したのだ。交通事故死亡者数が5,000人を下回ったのは、1978年以来36年ぶりのこと。自動車の登録台数や運転者数は増えていることを考えると、まさに希望のある統計だ。
交通事故死亡者数が減少したのは、セウォル号沈没事故のショックにより、安全を意識する人が増えたことなどが挙げられている。しかし、減少といっても、数字の上では微々たるものだ。韓国では自動車1万台に対する死亡者数は2.0人で、依然としてOECD(経済協力開発機構)の平均値(1.3人)を大きく上回っている。
実際、つい先日も仁川空港近くで約100台が衝突する玉突き事故が起きている。死亡者数は2人だったが、60人以上もの重軽傷者が出た。中央分離帯やガードレールなどの各種安全装置の拡大、最新IT技術を駆使した交通管理の導入、路面が陥没するシンクホール現象を防ぐための点検作業など、根本的な状況改善への道のりは遠いと言わざるを得ない。まだまだ、韓国での交通事情には大きな注意が必要だ。
(取材・文=慎虎俊)
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