「僕はISISが好きだ──」18歳の韓国人少年を“イスラム国”合流に導いた、孤独と疎外感の正体とは
#韓国 #東アジアニュース #河鐘基 #IS
「Brother, Just I say I want to join ISIS」――。
キム君から、そんなメッセージが発せられていたことが、後に明らかになっている。出発前にはすでに、ISISに合流すると固く心に決めていたのだろう。ある日、キム君は「トルコ旅行に行きたい」、そして「帰ってきたら検定試験(資格試験)を受ける」と、自ら両親に話を切り出した。外の世界とのつながりを拒んでいた息子の前向きな言葉に、両親は喜び、旅の手助けをすることを厭わなかった。家計は決して潤沢ではなかったが、息子に起こっている変化を逃したくない一心で資料を集め、個人ガイドを手配した。そして出発から数日後、息子は行方をくらました。キム君の両親は、「ISISに惹かれていることに気付けなかった」と、深く後悔している。
多くの韓国メディアは、残されたキム君の足跡から、韓国社会で孤独感を感じており、自分を認めてくれる居場所になるかもしれないISISに、深く惹きつけられたのではないかと推測している。
ISISと接触する若者が多いフランスで、ジャーナリストとして活躍するアンナ・エレナ氏も、イスラム国に惹きつけられる青年たちの中に、同様の疎外感と孤独感を見いだしている。彼女は、著書『Dans la peau d’une djihadiste’(直訳・ジハーディスト女性の身代わりになって)』の中で「淋しさに打ちひしがれている青少年たちは、自身に関心を寄せてくれるISISのメンバーに簡単に惹かれてしまう」と語り、フランス社会のひずみを暗に示唆した。
現在、ISISには国籍や人種を問わず、さまざまな国の若者たちが参加していることがすでに広く知られており、今後も増え続けるだろうと懸念するメディアや専門家も少なくない。もし、世界中の若者がISISに合流する動機のひとつに、社会に対する孤独感や疎外感があるならば、看過できない問題ではないだろうか。
朴槿恵政権は昨年、反イスラム国を鮮明に打ち出す欧米諸国に歩調を合わせる意を明らかにしている。一方で、足元の韓国社会では少子化、世代間格差など若者の生にとって不利な条件が整いつつある。そこから第2、第3のキム君が生まれないとは、誰も断言できない。実際に、欧米のメディアによると、キム君のほかにも2名ほどの韓国人がイスラム国に所属しているとの報道もある。ゆくゆく、韓国が自国民に銃を向けるという最悪のシナリオさえも、ただの妄想ではなくなってきた。
インターネットと孤独感に国境がない以上、日本でも同じような問題は容易に起こりうるかもしれない。テロに屈しないという言葉の意味は一体何なのか? その内実については、熟慮すべきだろう。
(取材・文=河鐘基)
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