『プロレタリア芸人』ソラシド本坊元児「ほんまに腹立つわ」が笑いに変わる瞬間
#お笑い #インタビュー
お笑いコンビ・ソラシドの本坊元児が、初めての著書『プロレタリア芸人』(扶桑社)を出版した。2010年に勝負を賭けて大阪から上京してきたものの、芸人としての仕事がほとんどなく、月28日は過酷な肉体労働に精を出している。自伝的小説ともいえるこの本では、壮絶な現場仕事で身も心もすり減り、どんどん自暴自棄になっていく本坊の苦悩の日々が余すことなく描かれている。彼はこの本で何を訴えようとしているのだろうか?
――この本を書いたきっかけは?
本坊 もともとは、とろサーモンの村田(秀亮)君が僕のドキュメンタリーVTRを作っていて。それをイベントで流したりしていたんですけど、なんとかDVDで世に出したいと思っていまして。僕は僕で本を書きたくて、ブログを書いたりしていたんですけど、「それも一緒に出しませんか」と村田君が言ってくれたんですね。だから最初は一緒に出すことを考えていて、本にDVDが付いているというイメージだったんです。
そこでちょうど、扶桑社さんから「本を出しませんか」というお話を頂いたので、話し合った結果、書き下ろしで本だけを出すということになって、ありがたくやらせてもらうことにしました。すごくラッキーだったなと思っています。
――書いていて苦労した点は?
本坊 現場仕事をしたことがない人にもわかってもらうために、用語の説明とかをしないといけないのが大変でしたね。こんな道具がある、こんな作業がある、1日の仕事の流れはこういうふうになっている、とか。説明しないといけないことが、たくさんあるんですよ。でも、これをただ箇条書きで書いても話にならないから、うまく流れを作らないといけない。でも、そこにエピソードをどんどん挟んでいくと、時系列がバラバラになってきたりする。それで結構苦労しましたね。
――現場でしか使われていないような用語が唐突に出てきたりするところも、面白いですよね。
本坊 ああ、そこはこだわりました。「集(たか)る」とか。なるべく自分たちが現場で使っていた言葉を、そのまま使いたいなあと思っていたんです。「集る」とか「鉄扉(てっぴ)」とか。鉄の扉って書いた方が伝わりやすいのかもしれないですけど、現場では鉄扉は鉄扉やから。
――言葉や言い回しのひとつひとつまで、かなりこだわっているんですね。
本坊 普段の漫才のネタ作りでも、こんなに考えたことはないですよ。ネタについて相方と話し合うときもありますけど、ここまで時間かけないですね。漫才の打ち合わせって、ネタ作るときも練習するときも、長くて3時間が限界。もうええわ、あとは帰ってやっとくわ、って。集中力が続かないんですよ。
でも、この本の推敲は、昼から夜まで8時間ぶっ通しでやっても、全然苦痛じゃなかったんですよ。時間が許すんやったら、このまま朝までやりたいなあって。この言い回しの方が伝わりやすいかな、とか考えたりする作業自体が楽しかったですね。
――漫才よりこっちの方が楽しいかも、とおっしゃっていましたね。
本坊 漫才はあくまで2人の所有物ですからね。2人がおもろいと思ってないといけない。相方の水口(靖一郎)が納得でけへんなあと思ってるネタは、できないんですよ。
でも、本に関しては、僕の考えありきで編集者さんたちも意見を言ってくれるので。たとえ訂正が入っても、「その言い方だと、ちょっと僕の言いたかったこととニュアンスが変わってくるんですよね」って言える。それが、ありがたかったですね。ガッツリ自分の考えが生かせる面白さはありました。
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