韓国で起きた女子中学生集団暴行事件の映画化! セカンドレイプが怖い『ハン・ゴンジュ 17歳の涙』
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実際の事件は被害少女は当時中学生だったが、『ハン・ゴンジュ』では高校生に変えるなどフィクションとして作られているものの、本作がデビュー作となるイ・スジン監督は少女の心の葛藤をナイーブに浮かび上がらせる。忌わしい事件に巻き込まれたハン・ゴンジュ(チョン・ウヒ)が下宿先から新しい学校に通い始めるところから物語は始まる。ゴンジュの顔は何かに怯えているような、怒っているような、そして全てに絶望しているかのような表情だ。事件のことを知らない人には、表情がまるで読めない女の子のように映る。ゴンジュは転校先では誰とも交わらず、下宿先のコンビニを手伝いながら、近くのスイミングプールで水泳の練習を始める。懸命に身体を動かしていれば、とりあえず嫌なことを思い出さずに済むし、塩素の強いプールの水に浸かることで自分の身体を清めた気分になれるのだろう。
いつもひとりぼっちのゴンジュに好奇心を抱いたのは同級生のウニ(チョン・インスン)だった。同年代の女の子とは異なるミステリアスさを漂わせるゴンジュのことが、ウニは気になって仕方ない。「あなたの声は素敵だわ。アカペラサークルに一緒に参加しない?」と無邪気に誘ってくる。ゴンジュは恨めしかった。ゴンジュも少し前までは、ウニのように同級生と戯れてシャイな男子学生に恋いこがれる普通の女の子だったのだ。できれば事件前に戻りたい。自分の人生をリセットしたい。プールで泳ぐ(というよりも、溺れかかっている)ゴンジュの姿は母親のお腹の羊水に戻りたがっているように映る。
毎日のようにおせっかいを焼き続けるウニに、とうとうゴンジュのほうが根負けした。ウニの仲間たちと一緒にイタリアの歌曲「恋人よ、さようなら(ベラ・チャオ)」をアカペラで歌い上げる。「つらい体験をした人じゃないと、あんな声は出ない」とウニの仲間たちもゴンジュの歌声を賞讃する。ゴンジュとウニたちとの愛おしくもせつない時間が流れていく。ゴンジュはようやく笑顔を見せるようになった。だが、美しい時間は残酷なほど瞬く間に過ぎていく。ある日、ゴンジュの通う学校に、加害者の親たちが示談書へのサインを求めて押し掛けてくる。アルコール依存症の父親が示談金欲しさに自分の娘を売ったのだ。セカンドレイプの恐怖が、再びゴンジュを襲う。ゴンジュが心を開いたことで築かれた新しい居場所は、あまりにもあっけなく崩壊していく。
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