『殉愛』幻冬舎が「酒鬼薔事件」少年Aの手記出版を画策? 遺族父が嫌悪感
#出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
さて、イスラム国による日本人人質問題は安倍政権が右往左往している間に、湯川遙菜さん殺害というむごい事態となってしまったようだ。
先週発売の文春、新潮はもちろん、月曜日発売の現代、ポストも湯川さん殺害については締め切りの関係で触れられていないが、特にポストには新聞、テレビとは違う情報が載っている。まだ、湯川さん殺害の真偽や、後藤健二さんの映像が本物かどうかなど、謎の部分が多い今、事件を考える上で参考になるので、これを今週の第1位にした。
現代は、安倍首相の中東訪問をこう難じる。
「二人の日本人が人質に取られているであろうことを知ってながら、周辺の敵対国に2億ドルも支援すると発表すれば、イスラム国が騒ぎ出すのは自明の理です。(中略)安倍総理が唱える『積極的平和外交』『地球儀を俯瞰する外交』は、取り返しのつかない過ちを犯した。安倍総理はまさに、まんまと敵のワナにハマってしまった。今回は、日本政府の政策の過失によって日本人が巻き込まれた戦後初めてのケースですよ」(元レバノン大使の天木直人氏)
かつてアフガニスタンで傭兵として働いたことのある高部正樹氏も、人質2人が虐待を受けていなかったのは、かなりマシな扱いを受けていたためで、日本を敵視していなかった証拠だと見る。だが、それが安倍総理の中東訪問をきっかけに「本気で身代金が取れると思い至った」というのだ。
また、イスラムに詳しい同志社大学客員教授の中田考氏やジャーナリストの常岡浩介氏が湯川さんを助けようと動いたにもかかわらず、日本政府は邪魔こそすれ、手助けを依頼することすらしなかった。
ポストはもっと手厳しい。安倍首相に「テロと戦う」などと言える資格があるのかと問う。
後藤氏がシリアに向けて出発したのは、昨年10月22日。後藤氏の妻に約10億円の身代金を払えというメールがあったのは11月初めだった。ポストはいち早くその情報を入手して動いたが、外務省が現地のシリア人を仲介役にして解放の交渉中なので、人命のために書かないでくれ、と言われたという。
だが、外務省は誰一人現地に入って救出に動いておらず、仲介者任せにしていたのだから「本気度は疑わしい」とポストは批判する。そして現代も書いているように、中田氏のような有力なパイプを持っている人間も使おうとしなかったのである。
身代金交渉は表に出れば難航するのは、これまでの人質事件でわかっていることだ。解決するなら水面下で敏速にやるしかない。もし多額のカネをテロ組織に払ったということが明らかになれば、国内だけではなく他国からも非難されることになる。
しかし安倍首相は、そうしたことを考えることなく、こう言ったそうだ。
「フランスのテロ事件でイスラム国がクローズアップされている時に、ちょうど中東に行けるのだからオレはツイている」(官邸関係者)
さらに、中東支援の総額25億ドルについてもこう言い放ったそうだ。
「日本にとってはたいしたカネではないが、中東諸国にはたいへんな金額だ。今回の訪問はどの国でもありがたがられるだろう」
「テロは対岸の火事で、自国民の人質には一顧だにしないのが『積極平和外交』の実態だったのか」(ポスト)と言っているが、その通りである。
しかし、現地で情勢は一変し、イスラエルで記者会見に臨んだ安倍首相からは、自信の欠片もなかった。たちまち日本へ飛んで戻り、自分の中東訪問が2人の人質の生命を危うくしたかもしれないことなどおくびにも出さず、「テロと戦う」「テロには屈しない」などとうわごとのように言うだけである。
この政権の無策にもかかわらず、国民の多くが日本政府の対応に賛意を表しているのは、新聞、テレビがこの事件への政府の対応について、正確な報道をしていないからである。
国際政治アナリストの菅原出氏は、今回のイスラム国の出方で、他の過激派組織も日本を標的にしていいという認識が広がったとしてこう話す。
「こうなると日本政府が今から要求に応じれば国際社会から批判を浴びるし、中東に滞在する邦人の危険が高まる。日本政府は非常に厳しい状況に陥った」
日本人が人質になっていることを知りながら、その敵国へ行ってカネをばらまくという外交センスのなさと危機管理のできない安倍首相は、万が一、二人とも殺害されるという最悪の事態が起きたら、国民に向かってなんというのだろう。
官邸などにこもっていないで、トルコやヨルダンに乗り込み、自ら交渉役になってはどうか。起死回生は、それしかないのではないかと思うのだが。
(文=元木昌彦)
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