台湾の無名校が夏の甲子園で決勝進出していた!? 感動秘話『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』
#映画 #インタビュー #台湾
■国籍や歴史観に関係なく純粋に楽しめる野球映画
──ほとんどの野球映画が主人公チームは詳しく描くものの対戦相手は主人公たちの前に立ち塞がる単なる敵として描かれるのに対し、『KANO』は対戦相手も感情を持つ生身の人間としてきちんと描いているところも魅力的です。野球好きなら、国籍に関係なく楽しめる作品に仕上がっていますね。
マー ありがとうございます(笑)。日本もそうだと思いますが、台湾も野球に関してうるさい人がとても多いんです。どうすれば嘉農というチームの特性を浮かび上がらせることができるか。そこで考えたのが、対戦相手の視点から嘉農を描くというアイデアでした。『KANO』は甲子園で嘉農に破れた対戦校の選手が戦時中に嘉義の町を訪ねるシーンから始まります。彼の目線で嘉農ナインはどのように野球に打ち込んだのか、野球に対してどんな信念を持っていたのかを立体的に描こうと考えたんです。そのために嘉農だけでなく、対戦相手もしっかりと描いたんです。
ウェイ 上映時間が長くなってしまったこと(3時間5分)が、ビジネス的な点でのネックですね(苦笑)。上映時間が長いことを理由に、なかなか海外での配給が進んでいないんです。『セデック・バレ』と違って、中国大陸では『KANO』は残念ながら上映されていません。でも、僕とマー監督とで手分けして、欧米各地にいる華僑のルートを使って上映会をこれまで合計40回ほど開きました。各地で暮らす台湾人、中国人、朝鮮人、日本人、それに欧米人……いろんな方が『KANO』を観るために集まってくれました。途中で帰るお客さんがいるかなと心配でしたが、みなさん最後まで観てくれましたね。
マー ニューヨークのアジア映画祭でも上映されたのですが、米国といえば野球の本場なので、どのように受け入れられるか緊張しました。でも、観ていただいた方たちからは評価していただき、「今まで観た野球映画の中で最高だ」という言葉までもらいました。台湾と日本との歴史的な背景を知らない人が純粋に野球映画として楽しんでくれたことが、とてもうれしかったですね。上映時間が3時間5分あるのを長いと思う方もいるかもしれませんが、野球の試合はだいたいそのくらいですよね。『KANO』は歴史ドラマとして観ていただいてもいいし、青春ドラマとしても楽しめますし、野球の試合を観戦するつもりで映画館に来ていただいてもかまいません。きっと、映画の後半には嘉農ナインを応援しているはずですよ(笑)。
(取材・文=長野辰次/撮影=名鹿祥史)
『KANO ~1931海の向こうの甲子園~』
製作総指揮・脚本・プロデューサー/ウェイ・ダーション 音楽/佐藤直紀 監督/マー・ジーシアン 出演/永瀬正敏、坂井真紀、ツァオ・ヨウニン、大沢たかお 配給/ショウゲート 1月24日(土)より新宿バルト9ほか全国ロードショー (c)果子電影
http://kano1931.com
●ウェイ・ダーション
1969年生まれ。エドワード・ヤン監督作『カップルズ』(96)で助監督を経験。監督デビュー作『海角七号~君想う国境の南』(08)が台湾映画史上歴代1位となる記録的大ヒットとなり、その実績と勢いを活かして歴史超大作『セデック・バレ』(11)を製作・脚本・監督する。『セデック・バレ』も歴代2位となる興収を記録。台湾における国産映画ブームの火付け役となる。オランダが台湾南部に上陸した17世紀を舞台にした次回作を現在準備中。
●マー・ジーシアン
1978年生まれ。2000年にテレビドラマで俳優デビュー。歴史アクション超大作『セデック・バレ』(11)などに出演する一方、テレビドラマの演出や脚本を経験。少年野球の経験を活かし、『KANO ~1931 海の向こうの甲子園~』で劇場映画監督デビューを飾った。『KANO』は台湾のアカデミー賞・金馬奨で観客賞、国際批評家連盟賞を受賞するなど多くの映画賞を受賞している。
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