これは真実なのか、虚構なのか?『山田孝之の東京都北区赤羽』であぶり出される「己」
#テレビ #ドラマ #清野とおる #山田孝之 #テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
「今振り返って見てみるとあの時期はやはり相当参っていたのだなぁ、結構ヤバいところまで行ってしまってた」と本人も述懐する、「山田孝之の“崩壊”と“再生”の記録」だと山下は言う。
それらの証言すら、どこまでが真実で、どこからが虚構なのか分からない。ただ確かなのは、本作で山田が赤羽の地を訪れ、清野とおるをはじめとする、原作漫画に登場する赤羽の住民たちと交流をしていくということだ。今後は、親友の綾野剛や先輩のやべきょうすけ、大根仁監督、ミュージシャンの吉井和哉らも登場するという。もちろん“本人”役で、だ。
1話のラストでマスク姿の清野とおると赤羽で合流した山田は、亀ヶ池弁財天や“拝めないお稲荷様”作徳稲荷大明神が祀られているビル、清野が初めに暮らしたアパートなど漫画に登場するスポットに案内される。
「清野とおるのトキワ荘なわけですね」「友達いなかったですけどね」「こっから始まったわけですね。サクセスストーリーが」「サクセスはまだしてないですけど」などという乾いた会話をしながら、その日の最後にたどり着いたのは、「ナイトレストラン・マカロニ」。そこで山田孝之の歓迎会を開いてくれるという。
集まったのは、居酒屋「ちから」のマスターや悦子ママ、堅気の人とは思えないコワモテのジョージさんなど、原作漫画に登場する名物キャラたち。もちろん、役者ではなく本物の赤羽の住民たちだ。
彼らの“圧”に押され、山田が渋々、THE YELLOW MONKEYの「カナリヤ」を歌ったり、ダジャレや下ネタが飛び交う、いかにも「赤羽」というムードの宴をカメラは映し続ける。
そしてその宴会の最後、山田は自分が赤羽に住みたいと思った経緯を説明しながら、締めの挨拶をする。
「赤羽に住んで、みなさんのように己を持って生きていきたい」
その挨拶に拍手が起こる中、ひとりジョージさんだけは、もともとコワモテの顔がさらにこわばっていた。
「おいらよ、悪いけどお前の最後の話で、今、拍手も握手する気もないよな」
山田を隣に座らせたジョージさんは、静かに怒りをぶつける。
「赤羽の人たちをなめてねえか?」
清野がフォローしようと慌てて口を挟む中、「素直に生きれるように赤羽で挑戦したい」とあらためて説明する山田に「挑戦したいなんて思ってること自体がおかしい」とジョージさんは突っぱねる。
「お前にその気があるんだったら、普通に生活すれば素直になるんだよ!」
そんなジョージさんの説教に、虚空を見つめる山田というカットで第2話が終わるのだ。
どこまでが台本なのか、まったく分からない。ドラマなのか、ドキュメンタリーなのか、もはやそんなことはどうでもいい。ジャンルなどという枠組みを解体し、すべてフラットにしてしまうのが「テレビ」だ。真実と嘘もないまぜにし、あらゆるジャンルを内包するのが「テレビ」なのだ。そうしてテレビはジャンルを超え、人間そのものの「己」をえぐりながら映し出す。それでもなお、あの虚空を見つめる山田孝之を見ると、もう一度問い返さずにはいられない。
いったい僕は、何を見ているんだろう?
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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