これは真実なのか、虚構なのか?『山田孝之の東京都北区赤羽』であぶり出される「己」
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いったい僕は、何を見ているんだろう?
『山田孝之の東京都北区赤羽』(テレビ東京系)を見ていると、そんな疑問がどうしても湧いてくる。原作には清野とおるの漫画作品『東京都北区赤羽』『ウヒョッ! 東京都北区赤羽』がクレジットされているし、これまでドラマ作品を放送してきた枠だし、「主演」は山田孝之だから、おそらくドラマなのだろう。だが、どう見ても、普通のドラマではない。なにしろ、原作漫画の作者であり、主人公であるはずの清野とおる本人がマスク姿で、なぜかミニチュアホースを連れて、主演の山田孝之と一緒に画面の中で普通にしゃべっているのだから。
『山田孝之の東京都北区赤羽』は、山田孝之の映画撮影風景から始まる。『己斬り』と題された時代映画である。監督は、『天然コケッコー』で報知映画賞最優秀監督賞を最年少で受賞した山下敦弘。山田演じる主人公が、一番の悪は自分だということに気づき、「死に様こそ生き様」と刀で自害するラストシーンを撮っている。しかし、山田は突然「作り物の刀では死ねない」と面倒くさいことを言いだし、撮影を止めてしまう。「刀(真剣)を用意してもらうか、タイトル・結末を変えるか」と。当然ながら、どちらも監督は受け入れることができず、撮影は中止してしまった。
その数週間後、山下のもとに山田から荷物が届けられた。それが『東京都北区赤羽』の単行本だ。山下を自宅に呼び出した山田は、その漫画を読んだかを確認すると、「感じなかったですか?」と山下を見据えて問う。「え、何が?」と戸惑う山下に、山田はこう言うのだ。
「ここに出てくる人たちって、すっごい人間らしいと思いませんか?」
「僕は今まで自分らしく生きないように生きてきたんですよ」
「自分らしい軸を作りたい」
ついては赤羽に住みたい、とまで言いだす山田。そして、軸を見つけるまでの過程を、山下監督に記録してほしいと請うのだ。
本作のジャンルを規定するならば、『東京都北区赤羽』をモチーフにしたモキュメンタリーということになるだろう。現実と虚構をないまぜにしながらドキュメンタリー風のドラマを作っていくジャンルである。
『山田孝之の東京都北区赤羽』が“連続ドキュメンタリードラマ”として放送されるに至った経緯を、山下とともに本作の監督にクレジットされている松江哲明はこう証言している。
「山下君から『松江君、助けて』と、ある日突然連絡がありました。そこで見せられたのは、赤羽での山田孝之を映した日常の映像素材。『2時間前後の映画にまとめてしまうのは、もったいない』と感じ、テレ東さんに相談したところ、なんと全12話の番組として放送していただくことになりました。僕はドキュメンタリー監督としての技術をぶち込み、何よりも北区民として恥ずかしくない作品を目指しました」(番組公式HPより)
実際に、山田は赤羽に移り住んで、そこでの日常を山下は撮り続けたという。
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