佐村河内事件にそっくり過ぎる『ビッグ・アイズ』ティム・バートンが描く創作現場の奇妙な人間関係
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「STAP細胞はあります」会見と並んで2014年のワイドショーを賑わした佐村河内ゴーストライター事件。クラシック音楽界で起きたこの騒ぎで、“現代のベートーベン”という肩書きはフェイクだったこと、多くのマスコミが感動秘話を盛り上げる片棒を担がされていたこと、18年間にわたってゴーストライターを請け負った新垣隆氏への報酬は700万円に過ぎなかったなど様々な事実が明るみになった。理化学研究所で起きたSTAP細胞事件と同様に、密室的な空間における奇妙な人間関係が巻き起こした悲喜劇だった。海の向こうで、タイミングよくこのテーマを映画化したのがティム・バートン監督。奇才監督にとって久々の実録ドラマとなる新作『ビッグ・アイズ』は、1960年代に全米を揺るがしたゴーストライター事件の顛末を描いている。
史上最低の映画監督を主人公にした『エド・ウッド』(94)以来となる、ティム・バートン監督のノンフィクションドラマ『ビッグ・アイズ』。ファンタジー大作『チャーリーとチョコレート工場』(05)や『アリス・イン・ワンダーランド』(10)などの大ヒット作を手掛けたが、今回はゴーストライターならぬゴーストペインターというフィクショナルな存在を扱っているだけに、逆にファンタジックなシーンはほぼ封印。創作の現場における人間関係のおかしさ、大人の男女のきれいごとでは済まないブラックな部分に触れた意欲作となっている。主人公夫婦を演じたエイミー・アダムスとクリストフ・ヴァルツは、共にアカデミー賞の常連俳優らしくそつのない演技でシンプルな人間ドラマを盛り上げている。
1950年代の終わり、専業主婦のマーガレット(エイミー・アダムス)は幼い娘の手を引いて家を飛び出した。夫のDVから逃れるためだ。マーガレットは自由を求めて、米国西海岸のサンフランシスコへ。美大を出ているマーガレットは大好きな絵の仕事で食べていこうとするが、シングルマザーが生きていくには当時は厳しい時代だった。公園で小銭稼ぎの似顔絵描きをしていたマーガレットは、風景画家のウォルター・キーン(クリストフ・ヴァルツ)と知り合う。ウォルターは彼女が描く“瞳の大きな少女”の絵を「個性的だ。君には才能がある」と褒めちぎる。画業だけでは食べていけないウォルターは不動産業も兼ねていた。自信家で口が達者なウォルターに結婚を申し込まれ、マーガレットは迷わず受け入れる。幼い娘には父親が必要だし、経済的な安定は何よりも大事だと考えたからだ。
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