村人200人が結託して8歳男児を追放……偏見・差別が“ヤバすぎる”中国・HIV事情
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昨年12月、四川省西充県にある村で、村人約200人が嘆願書に署名し、HIVに感染した8歳の男児を村から追い出そうとしていたことが話題となった。
坤坤(クンクン)という8歳の少年は、今から4年前、転んで負傷した目の治療の際に、HIVキャリアであることが判明。母子感染とみられている。
その後、彼がHIV感染者であるというウワサは、すぐに村中に広まった。同じ世代の子どもたちは彼との接触を避けるようになり、村の大人たちも一定の距離を保ちながらクンクンを好奇の目で見るようになった。しかし本人は、こうした周囲の反応の理由を理解していなかったという。
そして昨年12月7日夜、数十人の村の代表者たちが、少年を村から追い出すため、地方政府に嘆願書を提出することを決めた。結局、203人の署名が集まり、これを突きつけられたクンクンはやむなく承諾。拇印を押すとその場から駆け出し、その日は無言のまま床に就いたという。
その後、この一件をメディアが報じ、人権侵害だという声が高まったことから地方政府が介入。クンクンは村にとどまりながら病院での治療を受けられることとなり、現在は小学校にも通学しているようだ。しかし、わずか8歳で村を追い出されるという仕打ちを受けたクンクンの心の傷の大きさは、計りしれない。
「こうした偏見や差別こそ、HIVを逆に蔓延させる結果を招いている」
そう話すのは、中国事情に詳しいフリーライターの吉井透氏だ。
「中国では、1985年に初めて国内でHIV感染者が報告されてから昨年10月までの約30年間で、HIV感染者とエイズ患者の数は合わせて約50万人に達しており、死亡者は15万人を超えている。しかし、これはあくまで衛生部発表の数値。実際の感染者数はその10倍ともいわれています。というのも、感染が発覚してそのウワサが広まれば、クンクンのように社会から追い出され、仕事にも就けないという事態が待ち受けているため、感染の可能性を自覚していてもHIV検査を受けたがらない。このため、数値に現れないところでHIVがどんどん広がっている」(吉井氏)
昨年12月25日には河南省南陽市で、HIV感染者を雇い、住民に診断書を見せながら接近させるという嫌がらせをさせていた立ち退き屋が摘発されている。実際に雇われていたHIV感染者によると、その効果はてきめんだったというが、こうした仕事しか残されていない彼らもまた被害者なのだろう。
HIVに関する正しい認識の浸透が急がれる。
(文=牧野源)
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