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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム > 週刊誌スクープ大賞  > 【2014年週刊誌スクープBEST10】

小保方晴子、佐村河内守、百田尚樹……今年もお騒がせ!【2014年週刊誌スクープBEST10】

第5位
「林真理子『夜ふけのなわとび』」(「週刊文春」12/11号)

 今週の第1位は林真理子の連載コラムに捧げる。

「一ヶ月近くたって巷でこれだけ話題になっても、どの週刊誌も一行も報じないではないか。やしき氏(やしきたかじん=筆者注)の長女がこの本によって、『名誉を傷つけられた』と提訴し、出版差し止めを要求した。が、相変わらずテレビも週刊誌も全く報道しない。私はこのこともすごい不気味さを感じるものである。この言論統制は何なんだ! 大手の芸能事務所に言われたとおりのことしかしない、テレビのワイドショーなんかとっくに見限っている。けれど週刊誌の使命は、こうしたものもきちんと報道することでしょう。ネットのことなんか信用しない、という言いわけはあたっていない。そもそも、『やしきたかじんの新妻は遺産めあてではないか』と最初に書きたてたのは週刊誌ではなかったか」

 林真理子が文春の連載「夜ふけのなわとび」で怒る怒る。週刊誌が自分の役割を果たさないのはどういうこっちゃ! と真っ当に怒り狂っている。

 この騒動は、百田尚樹という物書きが幻冬舎から出した『殉愛』という本についてである。

 先日亡くなったやしきたかじんの闘病の日々と、彼を献身的に介護する新妻との日々を描いた“ベストセラー狙い”のお涙ちょうだいノンフィクションだ。

 だが、この新妻というのが実はイタリア人と結婚していて、「重婚」の疑いがあるというのである。

 また、やしきの友人でもあり彼の楽曲に詞を提供していた作詞家の及川眠子が『殉愛』の中で資料として提示されているたかじん「自筆」とされるメモの字の筆跡について、真贋を疑問視するツイートをしたのだ。

「『殉愛』の表紙に感じたすっごい違和感。なんでだろーと思っていたが、はたと気付いた。たかじんってあんな字を書いたっけ? もっと読みづらい変ちくりんな字だった記憶が・・・。病気になると筆跡まで変わっちゃうのかな?」

 その上、やしきの長女が幻冬舎に対して「出版差し止めと1100万円の損害賠償を求める」訴訟を東京地裁に起こしたのである。

 これに対して百田は「裁判は面白いことになると思う。虚偽と言われては、本には敢えて書かなかった資料その他を法廷に出すことになる。傍聴人がびっくりするやろうな」とツイートしたものの削除してしまった。

 Web上のまとめサイトでは「百田尚樹氏はほぼ作家生命終了」とまで断定されてしまっている。

 これだけ話題になっている本についての「醜聞」は週刊誌の格好のネタであるはずだ。だが、不可解なことに出版社系はどこも取り上げないのだ(『サンデー毎日』と『週刊朝日』はやしき氏の長女のインタビューなどをやっている)。

 週刊現代を出している講談社は『海賊とよばれた男』が大ベストセラーになっている。週刊新潮は百田の連載が終わったばかり。タブーは他誌に比べてないはずの文春だが、林によると「近いうちに連載が始まるらしい」から、これまた書かない。

 小学館の週刊ポストも、百田の連載をアテにしているのかもしれない。

 私がここでも何度か言っているが、いまやメディアにとってのタブーは天皇でも創価学会でも電通でもない。作家なのである。

 昔「噂の真相」という雑誌が出ていたときは、毎号作家についてのスキャンダルや批判が載っていたが、いまや作家について、それもベストセラー作家のスキャンダルを読みたくても「サイゾー」以外どこを探しても見つからない。

「私は週刊誌に言いたい。もうジャ-ナリズムなんて名乗らないほうがいい。自分のところにとって都合の悪いことは徹底的に知らんぷりを決め込むなんて、誰が朝日新聞のことを叩けるであろうか」(林真理子)

 私も週刊誌OBであるから、恥ずかしくて仕方ない。ネットで現場の記者や編集者は、そんな状況を打破しようとしているというコメントを見つけた。

「文春や現代、ポストの週刊誌編集部には関西生まれの記者や編集者も多く、彼らは子供の頃からたかじんの番組に慣れ親しみ、親近感を持っており、今の状況は許せないと思っている。若手記者たちは『企画を出しても通らない!』と憤っています。中には仕方なく自腹で取材に動いたり、情報収集をしはじめる記者もいます。ある版元の、ノンフィクションが得意の敏腕編集者の下には、こうした情報が続々と集まっていると聞きました。騒動の裏側が本格的に暴かれる日も近いのでは」(夕刊紙記者)

 これに似たようなことを私も聞いているが、どこまでやれるかはなはだ心許ない。この本の版元は見城徹という人間がやっている幻冬舎で、彼の裏には芸能界の「ドン」といわれている周防郁雄がいるそうだ。百田はベストセラー作家であり、安倍首相のお友達である。

 この程度の「圧力」に屈して、この「事件」を書かないとしたら週刊誌など廃刊したほうがいい。

 私は百田の『永遠の0』を30ページほど読んで捨ててしまった程度の読者である。したがって、百田の物書きとしての才能をうんぬんすることはしない。だが、「文は人なり」である。安倍首相のような人間と親しいことをひけらかし、下劣な発言をたびたび繰り返している人間のものなど読むに値するわけはない。

〈元木昌彦の眼〉 ここに書いてあるように週刊文春で百田の連載が年末から始まった。出版不況の中で売れる数少ない作家の存在は、どこの出版社でも貴重である。批判めいたことを書いて連載をやめられたらどうしようと考えるのは無理はない。作家によってはこれまで出していた本をすべて引き上げてしまうケースも多くある。だが、ノンフィクションと銘打ちながら、片方の当事者の一方的な話だけで作り上げた本に対してものをいうことが出来ないとすれば、ジャ-ナリズムの看板は下ろすべきであろう。今年も文春が頑張っていただけに残念である。

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