小保方晴子、佐村河内守、百田尚樹……今年もお騒がせ!【2014年週刊誌スクープBEST10】
#出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
第10位
「小保方晴子さんにかけられた『疑惑』」(「週刊現代」3月8日号)
「小保方『STAP細胞』を潰せ!『捏造疑惑』噴出で得する人々」(「週刊ポスト」3月7日号)
第2の佐村河内事件か? 昨夜の友人たちとの酒席では、割烹着の“リケジョ”美人・小保方晴子さん(30・理化学研究所のユニットリーダー)が発表したSTAP細胞の話題で持ち切りだった。
普通の細胞を酸性の液に漬けるだけで、どんな臓器にもできる万能細胞が生まれるという「世紀の大発見」は、彼女がカワイイこともあってメディアが飛びつき、世界的な話題になった。彼女が着ていた割烹着の売れ行きまでがいいという。
科学誌「ネイチャー」に掲載され、世界から称賛を浴びていたが、ネットでは早くから、実験条件が異なるにもかかわらず酷似した画像が出ている「画像使い回し疑惑」が指摘され、捏造ではないかというウワサまで出ているのだ。
やっかみ半分の中傷かと思っていたら、どうもそうとばかりはいえないようである。
文春がいち早く取り上げたが、現代とポストが正反対の記事をやっているので、この2本を今週の第1位とした。
まずは“懐疑的”な現代から。
「素人目に疑問なのは、学会では論文を『間違えました、直します』と言って許されるのかという点だろう」(現代)
そこで、カリフォルニア大学デーヴィス校医学部で再生医療の研究に携わる、ポール・ノフラー准教授に聞いている。
「論文に、誤植などの小さな間違いは比較的よくあります。しかし画像の混同といった手違いは大問題であり、過去には論文撤回の理由になったこともある。本当に全体の結果に影響しないか精査しないといけません」
さらに現代は、小保方さんらが公開すべきデータを正しく公開していないと追及する。
「ネイチャー」に小保方論文のような分子生物学系の論文を投稿する際は「実験に使った遺伝子の情報を、公開の遺伝子情報データベースに登録する」という規定があるという。
だが今回の小保方論文は、正確なデータの公開が行われないまま掲載されてしまった。これでは研究成果が真実なのか、第三者が検証できないと、ケンブリッジ大学シルヴァ博士は厳しく批判する。
「データーの届出を行っていないことは最大の問題です。そのデータがあってこそ、世界中の科学者が論文の主張を確認できるのです。この手違いひとつをとっても、論文は発表されるべきではなかったと思います」
そして人々の疑念を一層深めているのが、発表から1カ月近く経ったいまもなお、世界中のどの研究所でも再現実験(追試)が成功していないことだ。
前出のノフラー准教授も、STAP細胞の発見のニュースを聞いて期待に胸を躍らせ、自ら追試を試みたという。だが、結果は失敗。ならばと自らのHPで世界の研究者に追試の成果を書き込んでくれるよう呼びかけたが、「集まったのは期待に反して『失敗』の報告ばかりだった」(現代)
ノフラー准教授は、こうも言っている。
「もしSTAPが作成されたことが確かなら──私はそう願っていますが──ほとんどの研究室では再現できないような、非常に難しいテクニックだということでしょう。私は小保方さんたちが、STAP細胞を作る『手順(プロトコル)』に特化した、新しい論文を出すことを期待します」
理研も、HPのトップに誇らしげに掲げていた小保方さんとSTAP細胞に関する記述を削除するなど、態度を一変させた世間の風当たりの冷たさは容易ならざるものになっている。
「いずれにしても、ことここに至っては、疑念を払拭する道は限られている。形勢逆転のためには、ミスの経緯を明かし、必要なデータを公表する、小保方さん自身の言葉や理研の誠実な説明が必要だろう」(現代)
これを読むと、何やら「?」がつく研究のように見えるが、ポストはそんなことはないと、小保方さんに代わって反論をしている。
ポストは小保方さんの論文に向けられた疑惑は4つあるとし、ただし、それらを冷静に分析していくと、少なくとも現段階では、『STAP細胞の発見が捏造』という批判は、完全な的外れであることがわかると書いている。
画像の使い回しについては、小保方さんの共同研究者の若山照彦山梨大学教授が、単純ミスで本筋にはまったく影響しないと語っている。
今回の発見の再現性についても、若山教授がこう話す。
「発表があってから、わずか3週間で結果が出るような甘いものではありません。96年、スコットランドの研究グループが、クローン羊の『ドリー』を作ったことを覚えていますか? 1年以上経っても誰も再現できず、ドリーの論文は捏造ではないかとさえいわれた。そんな中、私が約1年後にマウスのクローンを誕生させ、ドリー論文を再現した。 小保方さんが会見で“(STAP細胞の作り方は)手技的には簡単だ”といってしまったから勘違いされているのかもしれないが、世紀の発見がそう簡単に再現されるわけがない」
よってポストは、とにかく現段階でほぼ確定しているのは、補足論文に画像の掲載ミスがあったということだけだから、調査中だという理研や「ネイチャー」の報告が待たれるが、どの疑惑も「大勢に影響なし」といえそうなのであるとしている。
また、これだけの騒動に発展した背景には、一定の「アンチ小保方勢力」の存在が見え隠れするというのだ。
再生医療の分野には、出身学部を異にするグループが存在する。大きく分けると「医学部出身の研究者」と「それ以外(理学部、農学部、工学部出身など)」だ
。
ある医療関係者が、こう話す。
「医学部出身者の中には、遺伝子や細胞の分野とはいえ、人体を扱う医療分野で医学部出身者以外が実績を上げることを面白くないと感じている人は少なくない」
ちなみに小保方さんは早稲田大学理学部出身で、若山教授は茨城大農学部出身だそうだ。
「しかもこのところ医学部出身のグループは肩身の狭い思いをしている。昨年から医薬業界を揺るがせている、いわゆる『ノバルティス問題』である。世界有数の製薬会社『ノバルティスファーマ』(以下、ノバルティス)が販売していた降圧剤は、複数の大学医学部の論文結果を用いて『脳卒中や狭心症にも効果がある』と謳っていたのだが、それが虚偽だった。ノバルティスに都合のいい研究結果をデッチ上げた研究室には、ノバルティスから累計11億円あまりの金銭的支援が流れ込んでいた」
この事件にはとうとう東京地検が動き出し、大がかりな疑獄事件へと発展する可能性が大である。
私の友人の医者が言っていたのだが、この万能細胞が実用化されたら莫大な市場になり、日本は再生医療先進国として力を持ち、一大産業に育つ可能性が高いと、医療関係者の間では大変期待が高いそうである。
当然ながら、そこには考えられないほどのカネが動くことも間違いない。
ポストによれば、政府は13年度から10年間で、再生医療に対し約1,100億円もの支援を決めている。今、この支援金をめぐって、研究機関で争奪戦が行われているという。
「早速、14年度、iPS細胞研究に政府から150億円の支援が下りることが決まっています。そのほとんどは山中伸弥教授のいる京大の研究所に払われる。再生医療で結果を出せば、莫大な研究費が入るわけです。もし、STAP細胞が認められれば、理研や小保方さんグループに大量の研究費が投入されることになり、その分他の研究機関に回らなくなる。それを阻止する動きがあってもおかしくない」(医療関係者)
世紀の大発見か捏造か。小保方さんの愛くるしい笑顔を見ていると捏造などとは思えないが、早く白黒をつけてほしいものではある。
〈元木昌彦の眼〉 ご承知の通り小保方のSTAP細胞発見は世紀の大捏造になってしまった。釈明記者会見で彼女がいった「STAP細胞はありま~す」は流行語にまでなったが、世界中から注目されたSTAP細胞は、小保方の上司である笹井氏の自殺という悲劇と、彼女の理研退職で一応幕を閉じた。週刊誌のスクープからではなく、ネットからSTAP細胞への疑惑が噴出して、世紀の大発見のウソが暴かれていった。あらためてネットの威力を思い知らされた「事件」でもあった。
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