アナルの国からやってきた『バッド・マイロ!』カルト映画を過激&ポップに換骨奪胎しちゃった!
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人間の体の一部がモンスター化して、周囲の人々に危害を加えるというシュールな設定。ホラー映画好きな方ならご存知、デヴィッド・クローネンバーグ監督の初期作品『ザ・ブルード 怒りのメタファー』(79)が元ネタ。『ザ・ブルード』は精神治療を受けている妻の体からコビト状の腫瘍が次々と産み落とされ、身内に襲い掛かるという不気味すぎる内容だった。当時のクローネンバーグ監督は最初の妻と離婚調停中で、そのため『ザ・ブルード』には女性、そして妻への猜疑心がハンパなく漲っている。最初の結婚に失敗したことはクローネンバーグ監督に大きな影響を与えたらしく、最新監督作『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(現在公開中)で描かれる家族像もぐにゃぐにゃに歪みきっている。
クローネンバーグ監督が『ザ・ブルード』で生み出した“怒りのメタファー”軍団に比べると、『バッド・マイロ!』のマイロくんは主人公ダンカンの温和な性格を反映してどこか憎めないキャラクター。怒って牙を剥くと、『バスケット・ケース』(82)のベリアル兄ちゃんみたいに怖くなるマイロくんだけど、ひと仕事済ませる(ダンカンの嫌いな人間をぶっ殺す)と帰巣本能でダンカンのお尻へと戻ってくるわけで、ダンカンの脚をずるずるッと登っていく姿は超ラブリー♪ 思わずほおずりしたくなる可愛さです。まぁ、ほおずりするとちょっと臭いけど。
クローネンバーグ監督のカルト作からアイデアをいただいた下ネタ系のパロディ映画かと思いきや、男性にとってシリアスな悩みが主題として次第に頭をもたげてくる。セラピストのハイスミスは、マイロがダンカンの尻から出現したのには理由があると指摘する。ダンカンが幼い頃に両親は離婚し、ダンカンは父親の愛情を知ることなく成長した。そのため、自分が大人になることを潜在的に恐れているのだと。父親に棄てられた自分が良き父親になれるはずがないと思い込み、父親になることへの恐怖心がマイロを生み出した。ハイスミスはそう説明する。折しもサラが妊娠していることが判明。だが、ダンカンは素直に喜ぶことができない。なぜなら、きっとマイロがまた尻から出てきて、妻とお腹の赤ちゃんに危害を加えようとするに決まっているから。
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