テレビウォッチャー・てれびのスキマが選ぶ、2014年のテレビ事件簿【ドラマ編】
#テレビ #バラエティ #テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
2014年のドラマ界は「青春」だった
今年を代表するドラマといえば、冒頭にも挙げた『アオイホノオ』と『ごめんね青春!』だろう。今年のドラマ界は「青春」だった。今年はこの2作品のほかにも、『なぞの転校生』(テレビ東京系)、先出の『あすなろ三三七拍子』など「青春」(の残滓)をテーマにしたドラマが目立ったのだ。
福田雄一が脚本・演出を務めた『アオイホノオ』。次々と深夜のコメディドラマを量産している福田は昨今コント番組が作れないテレビ界において、ある意味、最もコンスタントにコントを作り続けている作家だ。そんな福田と原作の島本和彦の過剰な熱、そして柳楽優弥をはじめとするどハマりしたキャストの組み合わせは、大きな笑いと思わぬ感動を生んだ。もちろん、庵野秀明や岡田斗司夫らが実名で登場する本作は、80年代のサブカル史としても面白い。だが何よりも、自分には特別な才能があると信じて疑わない若者たちの挫折、葛藤、嫉妬、挑戦を描いた、ド直球の青春ドラマなのだ。そして本作は最後に主人公がプロ漫画家になり、責任を抱えた「青春の終わり」までを描いたのも秀逸だった。
同じように「青春」からの“卒業”までを描いた『ごめんね青春!』は、『あまちゃん』の宮藤官九郎の脚本。主演は錦戸亮、ヒロインは先出の通り、満島ひかり。仏教系の男子校とキリスト教の女子校が合併し学園祭を開くまでを描いた本作は、「秘密」「懺悔」「赦し」をめぐるドラマだ。登場人物の多くは「秘密」を抱え苦しんでいる。「懺悔」は、自分の心の中で反省するだけでは終われない。「秘密」を告白する行為そのものが、「懺悔」だ。「ごめんね」と伝えなければ、「懺悔」ではないのだ。そして「懺悔」することで、最終的にたいていのことは赦される。しょうもないところも、ダメなところも、罪も、全部含めて「青春」なんだと。「人間なんてそんなもん」と、「青春」はすべてを赦してくれる。「勝ちよりも負けのほうが青春!」なのだ。だから宮藤官九郎の描く世界は優しく、そして強い。青春時代に後ろめたい悔いや思い残しのない人なんて、きっといないだろう。『ごめんね青春!』は、そんな青春時代に戻してくれる。そして僕らの“罪”を残酷に浮き彫りにした上で、そっと優しく赦してくれるのだ。
青春時代は、自分がまだ何者でもないという現実を、残酷なまでに教えてくれる。本当のことを知りたいと思いながらも、それを知りたくないという矛盾と苦悩に満ちた時間だ。あまりに楽しく、笑えて、そして儚く切ない。『アオイホノオ』も『ごめんね青春!』も、そんな「青春」を見事に描いていた。それにしても『ごめんね青春!』がドラマのクオリティと反比例なほど低視聴率だったのが、あまりにももったいないし、腑に落ちない。いみじくも本作の主人公が言っている。
「腑に落ちないのが青春なんだ」
総括
今年は、新しい“挑戦”をしているドラマも目立った。『MOZU』(TBS系)はWOWOWとの共同制作で、通常の地上波ドラマとは異質の映像クオリティを生み出した。第1シリーズを地上波で、第2シリーズをWOWOWで(後に地上波でも)放送するという形式も新しかった。『おやじの背中』(TBS系)は「親子」を共通のテーマに据えた1話完結で、大物脚本家の連作という試み。さらに『素敵な選TAXI』(フジテレビ系)では、現役で第一線で活躍するお笑い芸人バカリズムを脚本に起用した。また夜8時台に、中高年にターゲットを大胆に絞った『三匹のおっさん』(テレビ東京系)や、『天誅』(フジテレビ系)などの成功も印象深い。こうした新たな試みは、日本のテレビドラマの可能性を拡げていってくれるはずだ。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
サイゾー人気記事ランキングすべて見る
イチオシ記事