テレビウォッチャー・てれびのスキマが選ぶ、2014年のテレビ事件簿【ドラマ編】
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2013年のドラマ界は、NHK朝ドラ『あまちゃん』や『半沢直樹』(TBS系)が高視聴率を獲得、社会現象を巻き起こした。それに比べると、今年のドラマ界は正直、話題性に乏しかった感が否めない。だが、今年もNHK朝ドラは、『ごちそうさん』『花子とアン』『マッサン』と高視聴率が続き、特に『花子とアン』は、ドラマファンからは賛否両論あったものの、花子のセリフ「ごきげんよう」が新語・流行語大賞にノミネート。完全に、一時期の低迷から復活したといえよう。また、『HERO』(フジテレビ系)が13年ぶりにリメイクされたのも話題を呼んだ。放送前は不安視されたものの、始まってみれば、キムタクの健在ぶりが光った。そして、世間の話題や視聴率にこそつながらなかったが、『ごめんね青春!』(TBS系)や『アオイホノオ』(テレビ東京系)など、クオリティの高いドラマが数多く作られたことにも触れておきたい。そんな今年のドラマ界を振り返る。
躍動する小栗旬と満島ひかり
小栗旬を侮ってはいけない。いや、もちろん、彼が素晴らしい役者であることは十分に証明済みだ。けれど、今年の小栗は、そんなハードルを軽々と超える演技を見せつけた。まず『BORDER』(テレビ朝日系)では、死者と話ができる刑事を繊細に演じた。そして『信長協奏曲』(フジテレビ系)では、現代からタイムスリップして信長のニセモノを演じる高校生役と、明智光秀と名乗ってニセモノの信長に仕えるホンモノの信長役という、その説明だけでも複雑な役どころを、一人二役で演じ分けた。前者は軽妙洒脱の人たらし、後者は重厚で品位あふれるキレ者。『信長協奏曲』の基本的にベタで分かりやすい展開に説得力を持たせたのは、間違いなく小栗の演技によるところが大きい。
そして『BORDER』では、「光」と「影」のボーダーラインで揺れ動いていた主人公が、その境界を越えてしまうという役どころに挑んだ。衝撃的で後味を引きずる、刑事ドラマ史に残る名シーンといっても過言ではない、圧巻のラストだった。また、コメディタッチの第5話で見せた、宮藤官九郎との名コンビっぷりも印象的だった。
女優陣で目立ったのは、満島ひかりだろう。『若者たち2014』(フジテレビ系)では気丈な妹役を感情豊かに演じ、『おやじの背中』(TBS系)では女子ボクサー役で出演。父親役の役所広司を相手に、文字通り体当たりの演技を披露した。が、なんといっても『ごめんね青春!』でのヒロイン・蜂矢りさ役がスゴかった。彼女の新境地にして、真骨頂といっていいだろう。特に、最終回直前の第9話での、主人公の平助(錦戸亮)から愛と罪の告白を同時に受けるシーンにおける、喜怒哀楽すべてがごちゃまぜに詰まったような表情の演技は、言葉ではとても言い尽くせない素晴らしいものだった。
また、窪田正孝も忘れてはならない。『花子とアン』ではスピンオフドラマが作られるほど人気を得たキャラクターを演じ、『Nのために』(TBS系)では透明感と闇を併せ持つ、彼にしか表現できないであろう難しい役を演じ、それぞれの作品でしっかりと脇を固めた。
『失恋ショコラティエ』『ディア・シスター』(フジテレビ系)の石原さとみは、完全に清純派から艶っ気全開の女優へと変貌を遂げ、強烈なインパクトを残した。
“新人”では、『アオイホノオ』の「津田さん」、『ごめんね青春!』の「会長」役の黒島結菜や、『ブラック・プレジデント』(フジテレビ系)や『セーラー服と宇宙人』(日本テレビ系)の門脇麦が印象的だった。
一級品の地味ドラマ
今年は、話題性が乏しく、視聴率は低かった地味な作品にこそ、秀作が多かった。たとえば、『ペテロの葬列』や『Nのために』(TBS系)がそれだ。共に宮部みゆき、湊かなえという人気ミステリー作家の作品を原作にしたドラマだが、それぞれ、原作からのアレンジも巧みで、キャスト陣もハマっていて好演。見応えも抜群だった。そのクオリティの高さほど話題にならなかったのは残念だ。
『あすなろ三三七拍子』や『ブラック・プレジデント』(フジテレビ系)も低視聴率に苦しんだが、作品の出来は一級品。奇しくも、どちらもすでに社会人である主人公が大学に通うという共通点もあったが、いずれもオリジナリティあふれる作品だっただけに、もっと多くの人に見てもらいたかった。
そんな地味な秀作といえば、毎年のようにそういった作品を量産しているのがNHK。今年も『さよなら私』や『聖女』を筆頭に、挑戦的でかつ安定感があるという離れ業。特に挙げた2作品では、主演の永作博美、広末涼子の実力と魅力を、あらためてまざまざと見せつけた。
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