お笑い評論家・ラリー遠田緊急寄稿『THE MANZAI 2014』博多華丸・大吉が優勝した3つの理由
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私が思わずハッとしたのは、1本目の漫才の中で華丸が「いいじゃないの~」と日本エレキテル連合の流行りのフレーズを入れてきたこと。もし芸歴数年の若手であれば、こういう手法をやることはまずあり得ない。お笑いライブの世界では「最もダサいことの1つ」とされているからだ。
でも、漫才の中で華丸がやる分には全く違和感がない。なぜなら、タレントとしての彼がバラエティ番組などでふざけてそれをやるのはちっともおかしくないからだ。彼らは自分たちのタレントイメージを決して否定せず、世間が見ているままの等身大の姿で漫才を演じていた。
3つ目は、緻密な戦略があった、ということ。1つ目と矛盾するように思われるかもしれないが、彼らは賞レース用の仕掛けを何も準備していなかったわけではない。2本のネタは、確実にこの日の決勝のために磨き上げてきたものだ。
1本目の漫才では、華丸が「ユーチューバーになりたい」と切り出す。おじさんキャラの華丸が、あえて若者世代の流行を追いかけようとするという構図。そして、2本目の漫才では、引き続きそのおじさんキャラをなぞるようなネタを見せた。
しかも、2本目の漫才では、「酒のチャンポンと親の意見はあとから効いてくる」などと、いかにも酔っぱらったおじさんが口にしそうな「新しいことわざみたいなもの」を何度も挟んでくる。爆発的な笑いを生んだこの仕掛けが決定打となって、彼らの勝ちが決まった。1本目で出てきたサンドイッチを食べるくだりを2本目で取り入れた箇所もあった。この2本のネタはワンセットで優勝を取りに行くための漫才になっていた。
テレビにたくさん出て、いくら有名になっても、彼らの本業は漫才だ。結果的には、知名度が上がったことで2人のキャラクターが世間にも知れ渡り、漫才自体もさらに深みを増した。円熟の極みに達した博多華丸・大吉が、横綱相撲で強豪たちをねじ伏せる。文句なしの快勝だった。
(文=お笑い評論家・ラリー遠田)
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