自分が愛した女は一体何者だったのか? フィンチャー作品の主題が詰まった『ゴーン・ガール』
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最後に話を『ゴーン・ガール』に戻そう。エイミー失踪事件が起きたことで、理想の夫婦は偽装夫婦だったことが暴かれる。NYの出版業界で華やかな生活を送っていた2人だったが、出版不況で雑誌が次々と廃刊し、ニックの故郷へ都落ちしていた。親の介護というと聞こえはいいが、実際は親が残した家と財産のお陰で夫婦は暮らしていた。幼少の頃からセレブ扱いされて育ってきたエイミーは、ドン臭い田舎暮らしに辟易していた。夫婦生活のきれいごとでは済まない部分が、次第に観客にも見えてくる。『髪結いの亭主』のマチルドが理想の夫婦生活に疲れ果てたのとは真逆で、『ゴーン・ガール』のエイミーは都会での絵に描いたような理想の生活が忘れられずにいたのだ。
一緒に暮らしている妻(もしくは恋人)は一体何者なのかという、もっとも身近な謎をミステリー作品に仕立てた『ゴーン・ガール』。タイトルが実に象徴的なことに気づく。既婚女性のことを“ガール”とは普通呼ばない。“消えた少女”とは誰のことで、いつどこで消えたのか? フィンチャー監督らしい、人間に対する不信感が吹き荒れる。それでもフィンチャー作品の主人公たちは日々生きていく。神さまが手を差し伸べることも、スーパーヒーローが颯爽と現われることもない。信用ならないこの世界で、どうやって人は生きていくのか。それこそがフィンチャー作品を貫くメインテーマだろう。
(文=長野辰次)
『ゴーン・ガール』
原作・脚本/ギリアン・フリン 監督/デヴィッド・フィンチャー 出演/ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリー、キャリー・クーン、キム・ディケンズ、パトリック・フュジット、エミリー・ラタコウスキー、ミッシー・パイル、ケイシー・ウィルソン、デヴィッド・クレノン、ボイド・ホルブルック、ローラ・カーク、リサ・ベインズ 配給/20世紀フォックス映画 12月11日(木)前夜特別上映、12日(金)よりTOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー
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