クリストファー・ノーラン4年ぶりのオリジナル作品は、自身初の宇宙SF『インターステラー』
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今週取り上げる最新映画は、VFXを駆使した宇宙の描写と人間ドラマが見事に融合したハリウッド製SF超大作と、ヘタレなロッカーがカリスマアイドルと出会って変わろうともがく姿を描いた和製ロックムービー。スケール感はまるで違うが、キャラクターや映像を通じて、スタッフの映画製作に注ぐ情熱がしっかり伝わってくる作品たちだ(いずれも11月22日公開)。
『インターステラー』は、『メメント』(2000年)や『ダークナイト』(08年)、『インセプション』(10年)のクリストファー・ノーラン監督による4年ぶりのオリジナル作品で、自身初となる宇宙SF。近未来、地球規模の環境悪化と食糧難により人類の滅亡が迫る中、NASAは太陽系外で新天地となり得る惑星を探す極秘ミッションを進めていた。経験を買われた元パイロットのクーパー(マシュー・マコノヒー)は、愛する家族に「必ず帰る」と約束し、先遣隊が送ってきたデータを頼りにブランド博士(アン・ハサウェイ)らと惑星間飛行へ旅立つ。
ノーラン監督は理論物理学者キップ・ソーンの協力を仰ぎ、時空の歪みやブラックホールなど最先端の宇宙物理学の理論を反映させつつ、親子や男女の絆と愛を織り込んで壮大な冒険物語を構築。巨匠スタンリー・キューブリックがSF作家アーサー・C・クラークと組んだSF映画の金字塔『2001年宇宙の旅』(68年)に、ストーリー面でも映像面でも比肩する傑作を完成させた。
共演陣もジェシカ・チャステイン、マイケル・ケイン、ケイシー・アフレックと演技派がそろい、短い出演ながらマット・デイモンも強い印象を残す。『2001年…』のHAL9000や『エイリアン2』(86年)のアンドロイド「ビショップ」を想起させるAIロボットのTARSや、宇宙飛行士の会話に出てくる「闇の奥」(『地獄の黙示録』の原作小説の題名でもある)など、映画マニアを喜ばせる仕込みもたくさん。映像表現の現在の到達点ともいえる宇宙空間の描写とスペクタクルな惑星間飛行のシーンを体感するためにも、大スクリーンでの鑑賞を強くオススメしたい。
『日々ロック』は、榎屋克優の同名コミック(「週刊ヤングジャンプ」で連載中)を、『SR サイタマノラッパー』(09年)の入江悠監督が映画化した青春ムービー。サエない高校時代の仲間とロックバンドを組んだ日々沼は、ビッグになることを夢見て上京する。ライブハウスで住み込みで働きながら、演奏活動を続けていたある日、ステージに酔った女が乱入して「雨あがりの夜空に」を熱唱。彼女は、デジタルな演出でカリスマ的人気のアイドル・咲だった。咲から「私に曲を書いて」と依頼されたことで、日々沼のロック人生が大きく変わっていく。
映画・テレビドラマの出演が相次ぐ若手注目株・野村周平が、コミュニケーション能力に問題を抱えながらもギターを持つとパワフルに豹変する、ロックバカな主人公を熱演。絶叫系のボーカルは好き嫌いが分かれそうだが、丸裸でギターを抱える姿にロッカーとしての説得力を感じさせる点はさすが。
咲役の二階堂ふみも、大ステージでのアイドルオーラあふれるパフォーマンスから、壊れそうに弱い少女の素顔をのぞかせる場面まで、振り幅の広い好演が光る。ビジュアル系バンドとのライバル関係をはじめ、大ネタ小ネタが次々に繰り出されて笑いっぱなしだが、青春のほろ苦さと夢の切なさと友情の熱さもしっかり描かれた快作だ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『インターステラー』作品情報
<http://eiga.com/movie/78321/>
『日々ロック』作品情報
<http://eiga.com/movie/80063/>
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