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『オオカミは嘘をつく』公開記念インタビュー

タランティーノも大絶賛! いま注目のユダヤ人監督コンビに聞く「イスラエルと映画と、アラブ人」

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――イスラエルが複雑な情勢にあることは理解しています。そんなイスラエルで、映画が果たす役割をどう考えていますか?

ナヴォット まず、5年くらい前までのイスラエル映画というと、教育的な側面がとても強かったんです。イスラエルの現状や近隣諸国との関係というものを世界の人々、あるいは自分たちが理解する手段として、映画がひとつの役割を担っていたと思います。イスラエルという国で、イスラエル人として生きるとはどういうことなのか――。そんなことを問いかけるような内容でした。当然、内容はパレスチナ紛争絡みであったり、近隣諸国との軋轢であったり。戦争とはどういうものなのかが描かれる映画ばかりが作られていました。

アハロン 一方で、パーソナルな家族ドラマというものも、それなりに作られていました。ただ、どちらかというと機能不全な家族が描かれることが多く、小津安二郎監督がかつて作っていたような作品も作られていました。びっくりされるかもしれませんが、イスラエルでは数年前までロマンティックコメディも作られていなかったんですよ。だから、愛についても学ぶことができない。それはおかしなことですよね。日本であれ、ロシアであれ、どこの国であれ、ラブストーリーはもちろんあるし、それが映画になるというのはごく当たり前のことですから。

 でも最近は、変わってきました。恋愛映画はもちろん、ホラー、サスペンス、ファンタジーと、非常に多種多様なジャンルのイスラエル映画が登場しています。さまざまな側面から、イスラエルという国の顔がうかがえるような映画が作られているんですよ。映画の役割は、本当に増えたと言っていいと思います。

――なるほど。映画の中で、「アラブ人だけだから危険な地域だ」「アラブ人はみんな殺人鬼に見えるのか」というセリフがありました。アラブ人を揶揄するような表現が出ていますが、偏見はあるのでしょうか?

アハロン 近隣諸国を含め、イスラエル国内でもユダヤ系の人とアラブ系の人がいる現状の中で、偏見というものはもちろんあります。それは、何よりも映画の中でより顕著かもしれない。というのも、イスラエル映画の中に出てくるアラブ系の登場人物は、ほぼ確実に“被害者”か“テロリスト”。非常にステレオタイプに描かれることが多くて、普通の市民として登場することは、ほとんどないです。ですから、『オオカミは嘘をつく』を作るときに、私たちはあえてみんなの思い込みや偏見を翻してやろうと考えました。それで、今回のアラブ人のキャラクターになりました。本作の中では、殺し合いをするのはみなユダヤ人で、唯一正気を保っているのがアラブ人という構図になっています。

 エルサレムで自爆テロが頻発していた時期に、たまたま現地にいたんですが、自爆テロの犯人は、アラブ人たち。バスに乗るたびに「アラブ人はいないか」と探している自分も確かにいた。そういう環境を経験してしまうと、アラブ人全員が怪しいと猜疑心を持ちやすくなってしまうんです。特にテロが頻発し、緊張が高まっているときは、その猜疑心がますます強くなります。でも、私は大学の教員として映画を教えていたので、学生の中にアラブ人もいましたし、普通に交流もありましたよ。

――日本では、いよいよ11月22日から公開が始まります。楽しみにしているファンに、何か伝えたいことはありますか?

ナヴォット 予習や心の準備を一切しないで見てほしいです。この映画はひねりとか、サプライズとか、すごく展開を見せるものなので、何も知らずに見たほうが楽しんでいただけるのではないかと思います。

アハロン 自分自身も、日本や他国の映画を見るときは、それこそプロットも知らないで見るほうが好きなんですよ。「イカれた映画監督が作った」という情報だけで見るほうが楽しめるし、『オオカミは嘘をつく』もそれは同じ。あまり情報を入れずに、見ていただきたいです。
(取材・文=呉承鎬)

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●『オオカミは嘘をつく』
監督・脚本:アハロン・ケシャレス/ナヴォット・パプシャド 
キャスト:リオール・アシュケナズィ/ロテム・ケイナン/ツァヒ・グラッドほか
配給:ショウゲート
11月22日(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
<http://www.bigbadwolves.jp/>
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最終更新:2015/08/27 12:32
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