「なんとかしてくれる」男、勝俣州和の3つの武器 『ダウンタウンDX』(10月23日&10月30日放送)ほかを徹底検証!
#勝俣州和 #タレント解体新書
<キラーパス>
勝俣州和は10月23日&10月30日に放送された『ダウンタウンDX』に、2週続けて出演している。これがすでに信頼されている証しなのだが、どちらの週でもしっかり結果を残している。というか、共演者に結果を残させている。これが彼の<キラーパス>という武器だ。
10月23日放送では、博多華丸・大吉と共演。勝俣州和はエピソードとして、以前雑誌の取材で鼎談した出来事を挙げる。「夏を乗り切る麺」という特集記事でトークは盛り上がったのだが、最後の最後で「好きな麺は?」と聞かれた大吉が「僕は年間通して食が細いので、わずかなそうめんがあればいいです」と答えたというエピソードを披露。また10月30日放送では、共演している和田アキ子の暴力的な悪行を暴露する。
ここで重要なのは、勝俣州和は自分が話すエピソードトークでシメない、という点だ。その場に共演者がいるということから、当然その共演者に話が振られる。自らがゴールを決めているのではなく、共演者のエピソードを語ることで<キラーパス>を送る。あとは共演者がゴールを決めるだけだ。日頃からさまざまな芸能人と交流を持っていて、その際に常に使えるネタを探している勝俣州和だからこそ、なせる業である。特にゲストが多数出演するトークバラエティではパスの応酬こそがすべてであり、勝俣州和が「なんとかしてくれる」と言われるゆえんはここにあるのだろう。
<オウム返し>
勝俣州和の武器で、最も威力を発揮するのが<オウム返し>である。10月23日の放送で、モーニング娘。’14のメンバーである鈴木香音が顔で果物のモノマネをしたときがまさに顕著だ。かわいい顔を思い切りひん曲げて、リンゴ、バナナ、ミカンの顔マネをする鈴木香音。普通のアイドルの変顔とはレベルが違うほどやり切るため、スタジオでは微妙な空気ながらも笑いは起こる。
アイドルが顔マネ、あるいはモノマネをする場合の定石としては、スカシもしくは強いツッコミにより、滑ったアイドルを誰かが救うというのがセオリーである。だが、スタジオは微妙に受けている。この場合の判断は難しい。どちらに転ぶのが正解なのかが分からないからだ。そこで浜田雅功はまず「ナイスファイツ!」と真顔で拍手をするのだが、ここで勝俣州和は「ナイスファイツ!」と、取りあえず浜田雅功のセリフを<オウム返し>する。つまりその後の判断を、MCに任せるのである。是非の評価は自分で下さず、その場のキープレイヤー、ここで言うと松本人志に委ねるのだ。
最終的に松本人志は笑いながら「そこまでできるとは思わなかったですよ」とコメントし、言わば「是」の評価を与える。その瞬間、勝俣州和は鈴木香音に対して「良かったね、褒められて」と言葉をかけ、「是」であることを視聴者に強調する。
勝俣州和の真骨頂は、ここにこそある。自らがしゃしゃり出ることなく、スタジオ全体の空気を読みながら、あるべき方向が見えたらそこで初めてオールを漕ぐ。トークバラエティという急流を、冷静に見つめて舵を切り、行くべきところで船を進める。勝俣州和は決して間違えない。だからこそ彼は、どんな場所でも、「なんとかしてくれる」のである。
【検証結果】
どんな番組においても、共演者を立てながら、確実に成立させる勝俣州和。その仕事のあり方は、まるで各球団を渡り歩く、フリーのバッティングピッチャーのようだ。バッターが望むボールを的確に投げるコントロール。球速を自在に操ることのできる地肩の強さ。そしてバッターとの間に築く信頼関係。彼は決して試合のマウンドに上がるエースではない。だが、優秀なバッティングピッチャーであるために、誰よりも多くブルペンで球を投げているのは、間違いなく勝俣州和その人だろう。
(文=相沢直)
●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa
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