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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 「毎日どこかで歌っていたい」【岩男潤子】タイムリミットだった23歳の夜
宍戸留美×小明×Voice Artist【声優 on FINDER!】vol.29

「毎日どこかで歌っていたい」【岩男潤子】タイムリミットだった23歳の夜

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――さびしい選択……っていうか、それでまだ高校生だったんですか!? 13歳で上京といい、ハード過ぎますよ!

岩男 たまには、何をしたいのか聞いてくれて、「それならこんな仕事があるよ」って、デパートの屋上で司会をさせてもらったりもしたんですけど、そこに歌手の方が来たりするとね、「歌手の誰々さんです、どうぞ!」って言いながら、うらやましくて、舞台袖から「自分もここにいきたい」と思って……。「やっぱり心を閉ざしてはいけないんだ!」って一念発起して、歌を入れたデモテープを、プロフィールと一緒にいろんなところに配ったりして(笑)。でも、デスクにはさっぱり読んでもらえない資料が積み上がっているのも見るから、いかに厳しい世界なのかを思い知らされながら、OLをやって、高校に行って、売り込みをやって、声優さんの仮歌を歌わせてもらったりしていました。

――ダラダラしていただけの自分の高校時代が恥ずかしくなってきました……。さらに、なかなか表舞台の仕事にたどり着かないので不安になってきます……。

岩男 父が決めたタイムリミットの23歳を迎えたときも、まだ東京駅のキオスクと、宝石屋の販売員をしていて、とにかく生きることに必死だったんですよね。“23歳”というのが自分のなかで離れなくて、「ここで何かを決めなければ、実家に帰らなくちゃいけない……」と焦っているときに、たまたま以前お仕事をしたことがある芸能関係の方が、東京駅のキオスクを通りがかって、「あれ? 今はどうしてるの? 芸能の仕事は?」って言われて、「オーディションはたくさん受けているんだけど、勝つことができないんです」って言ったら、「歌える声優さんを募集しているから、応募してみたら?」って。それがNHK総合の『モンタナ・ジョーンズ』っていう、今からちょうど20年前の作品で、オーディションは受けたものの、なかなかお返事がこなかったから、「これはダメだったな」と思って、アパートの更新も迫っているし、もう引っ越しもしなくちゃならない。引っ越しの荷物に囲まれながら、オーディションの結果を待つっていう感じ。大家さんにも「もう出て行ってくださいね!」って言われて、泣きながらダンボールの封を閉じていたら、そこに、「1年間ヒロインでお願いします」って、オーディションの合格の連絡をいただいて。

――いろいろとギリギリ!! 肝が冷えましたね!!

岩男 そうなんです(笑)! 「10年間がんばったな……」って、泣きながら閉じていた荷物のテープを今度は喜びいっぱいで剥がして、やっと実家の父と母にも、「もう1年がんばらせてください」って連絡することができて。そのとき、両親が「あと1年じゃないよ。あと10年がんばりなさい」って言ってくれて、そこからまた、10年がんばろうって気持ちで、23歳からのスタートです。

――素敵なご両親ですね……! そしてついに声優人生の幕開けが!

岩男 放送は24才のときなので、1994年の4月に自分が初めてアフレコしたアニメが放送されて、そこからNHKの『モンタナ・ジョーンズ』のイメージソングを歌うお仕事もいただいて。それも、あくまでも“声優さんの仮歌”として歌ったものだったんですけど、なんとそれがポニーキャニオンさんのサプライズで、「君が歌ったこの歌が、君のデビュー曲だよ」って言われて。

――ヒュ~かっこいい~! ポニーキャニオン、粋~!

岩男 すごくビックリしましたよ、本当に! キャラクターしてのシングルも、岩男潤子としてのシングルも、ほぼ同時に2枚リリースして、それが入ったアルバムも作りましょう、という夢のようなお話で! そこから、憧れていた歌手としての活動と、声優としての活動を全力でがんばると決めたんです。「どっちかにしなさい」「なんで中途半端なことするの?」って厳しいことも言われていたんだけど……。

――え、岩男さんの周り、辛辣なこという人多くないですか(怒)?

岩男 器用にどっちもできてたら何も言われなかったんでしょうけど、なんせドジでのろまだから(笑)。歌って言われたら歌のことにしか集中できなかったんだろうし、おそらく「どっちがいい!」っていうものでもなかったと思うんですね。歌があったからセイントフォーにも入れたし、どっちも私にとってはなくてもならないもので。だから、こだわりぬいて、プロフィールにも「声優・歌手」と、今でも書かせていただいてます。

――いっぱい書いて! というか、声優として何作ぐらいに出演されたかご自分で覚えていますか?

岩男 そうですね。デビューしたときは、スケジュール帳にも週に一度『モンタナ・ジョーンズ』と書いてあるだけで、後はキオスクに通い続けていたので、「早く声優、歌手というお仕事でスケジュール帳が真っ黒になるといいな」と思って、それを目標にしてましたけど、気がつけば、ゲーム、その主題歌、キャラクターソング……あんなにやりたくてもできなかった歌のお仕事もたくさんいただいて。アニメも、子どもの声、動物の声、お母さんの声、と幅広くやらせていただいて、気がつけば何百作品と、もう数えきれないほど……!

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