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日刊サイゾー トップ  > 原発避難自治体・双葉町のいま
『フタバから遠く離れて 第二部』公開直前インタビュー

「“金目”ですべてが解決するのか――」原発事故から3年半……原発避難自治体・双葉町を引き裂く“分断”と内部対立

futaba2sub1.jpg旧騎西高校を去る、井戸川克隆前町長

――双葉町をめぐるトピックとして驚かされたのが、2013年の井戸川克隆前町長に対する不信任案の可決でした。この映画にも当時の様子が描かれていますが、井戸川氏へのわだかまりは以前からくすぶっていたのでしょうか?

舩橋 ずっとありましたね。双葉町民のうち、半分は福島県内に避難しているんですが、井戸川町長は埼玉県加須市に役場機能を移していました。それで、特に福島にいる双葉町の住民から「なんで福島県内に役場がないんだ」という話になっていたんです。井戸川さんが町長だった時代に、役場を埼玉から福島に移転することが決定されてしまいますが、この決定を(井戸川さんは)「議員の圧力」と話しており、本人は「福島県内には住めない」という姿勢でした。

――井戸川氏に代わって、伊澤史朗氏が町長に就任しました。これによって、どのような変化が町に起こったのでしょうか?

舩橋 伊澤さんが井戸川さんと大きく異なるのは、「福島に戻るのが一番いい」という考えです。公営住宅も福島県内に設置しようとしていて、双葉町は福島県の自治体だから福島で一緒に暮らしていこうという立場。ですから、加須に残っている人との温度差は生まれています。

 一方、井戸川さんの時代は、町長と議会に大きな溝があったんですが、伊澤さんはもともと議員なので議会と町長の距離はものすごく近くなりました。伊澤さんは、井戸川さんよりも情報をオープンに流すようになっているため、評判もいい。もちろん、井戸川さんも町のために尽力されてきましたが、コミュニケーションの面では十分でなかった点もあり、それが内紛を生んだのです。

――今作の中でも特に印象的だったのは、仮設住宅に住む人々が「避難所にいる人は2万円多くもらっている」と強い口調で不満を語っているシーンです。同じ原発避難民に対してネガティブな感情がぶつけられるというのは、ショッキングでした。

舩橋 避難所では、電気、水道、ガスなどが全部無料。また、同じ教室で共同生活をしているから、という理由でほかの被災者よりも2万円多く補償がなされていたんです。光熱費を自腹で支払っている仮設住宅の人からすると「これだけ自分たちは多く支払っているのに……」という不平等感がある。その不平等の一番わかりやすい部分が「プラス2万円」という金額なんです。

 俯瞰すれば、より悪いのは国や東電かもしれませんが、そこに盾突いても仕方ないという気持ちが原発避難民の中にあります。だから、目の前にいる人々に文句を言うしかない。町長や議会、避難所の人々への不満が蓄積し、井戸川前町長の不信任や2万円の差に対する不平に結びついてしまった。

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