映画『最後の命』NYチェルシー映画祭にて最優秀脚本賞を受賞! 芥川賞作家・中村文則の作品を初映画化した若手映画監督とは?
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そして今回、10月22日のイベント会場である、高円寺ショーボートにて松本監督への同行取材を敢行。公開記念ライブ「歌や映画は命に訴えかけるのか ~軍歌を聴いて語り合う一夜~」と銘打って開催された、演奏とトークライブに密着、以下はその現場レポート。
スコットランドの民族楽器であるバグパイプ演奏、ソ連ロシア戦時歌謡の歌唱に続いて主役である松本准平監督が登壇。チェルシー映画祭最優秀脚本賞の受賞直後ということもあり、満員の客席からは盛大な拍手と歓声が鳴り響いた。
松本監督の軽妙な挨拶から始まり、そしてもう一人の主役である文筆家・軍歌研究者の辻田真佐憲氏も続いて登壇。かつて、本サイトでも取り上げた初の著書『世界軍歌全集』(社会評論社)でマスコミデビューした辻田氏だが、軍歌ブームを煽る単なる「軍歌マニア」ではなく、エンタメを利用したプロパガンダという視点から鋭い考察を行っていて、7月に上梓した『日本の軍歌』(幻冬舎新書)は、発売2週間で重版が決定したという話題の人物。
MC担当のルポライター・昼間たかし氏からの鋭い一問一答に即答する両者だったが、会社や役所を退職してまで、映画監督や文筆家として身を立てて行こうとした決意が、ひしひしと伝わってくる熱のこもったトークを展開。
辻田氏は、強い口調で歌や映画がいかに時代に翻弄され、また政治利用される危険性を孕んでいるのかという事実の検証にまで踏みこんでいき、それに応じた松本監督からは、現代のような混迷の時代にこそ、人々の命を救うような真摯な表現を心がけていかなければならないし、その覚悟も必要なのだと訴えかけたあたりから、勢いに乗った両者はヒートアップしすぎて、トークは想定外の方向へとたびたび脱線。焦りつつも、台本通りの質問を繰り返す昼間氏に対して、松本監督と辻田氏は意識的に台本にはない語りを続けて止まらない。
ちなみに、台本上では受賞を称えられた松本監督から、「ありがたいです」という意味合いの言葉が返ってくる予定だったらしいのだが、「いやぁ、グランプリじゃないから……」との呟きが漏れてしまったため、辻田氏から、「そちらの台本通りにいくはずがないですよ」という皮肉まで飛び出してしまう始末。とはいえ、文筆家の道を自ら選択した辻田氏である。一足先にマスコミ試写で鑑賞した本作の見どころに丁寧な解説を加えて、松本監督を唸らせる一幕も。
後半では出演俳優の増田俊樹氏、長野克弘氏が揃ってお祝いに駆けつけたが、松本監督の劇場デビュー作から出演が続く増田氏から、「監督、本当に自分で脚本書いたんですか?」という危ないジョークが飛び出したり、長野氏からは日本兵を演じたカンヌ映画祭グランプリ受賞作『鬼が来た!』(2000年/日中合作)の撮影時、中国の山中で3カ月間、ずっと役になりきるために軍歌を聴きながら過ごしたエピソードなどが披露されたが、濃密なトークライブは後に控える演奏の時間が押し迫り幕引きとなった。
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