酒の席でも気は抜けない!? 北朝鮮政府高官がふいに仕掛ける「抜き打ちテスト」とは
#北朝鮮 #平壌でムーンウォーク
しかし翌朝。訪朝団の人から「君たちは“不合格”だってさ」と告げられました。
思想レベル的に、ということでした。その高官がビザ審査 にも関わっていただけに、それを聞いて私は「そうか、もう二度と入国できないんだな……」と落胆しました。しかし、なぜかその後も入国できたので、単に北朝鮮的「アホ認定」を食らっただけのようです。
というのも2002年、日朝首脳会談で国交正常化について明記した平壌宣言が採択されましたが、北朝鮮としては「拉致問題は解決済み」という立場を一貫し、日本政府側の経済制裁解除なしには再調査は行わないとしてきました。横田めぐみさんの「ニセ遺骨疑惑」で交渉が大きくこじれましたが、後に第三者による鑑定を受け入れることを明言しました(これについて、日本政府側からの返答はありません)。
一方、日本政府側は拉致被害者問題に焦点を合わせ、経済制裁措置という形で対応してきました。歴代政権が支持率アップのために拉致問題を利用してきた、という向きも否定できません。
高官はこれらを把握した上で、あえて質問をしてきたのでしょう。まさか、北朝鮮の東北弁で来るとは思いませんでしたが……。
またある日、私の部屋で某部門の女性担当者と飲んでいたときです。私は「業務上で拉致問題対策本部の方とも関わりがある」と口を滑らせてしまいました。すると、泥酔していた彼女は急に真顔になり、こう言いました。
「では、彼らに伝えておきなさい。小泉元首相は拉致被害者を一時帰国させ、朝鮮に戻す約束をなぜ破ったのか。それについて論理的な説明、もしくは謝罪する手紙一枚でももらえれば、我々はすぐに動く用意がある」
まずい、面倒くさい展開になってしまったなと思った私は、「はあ……日本政府に言っておきます(誰にだよ)」としか答えられませんでした。
あれから、はや数年。現在に至るまで、水面下ではいろいろと動いていたんですね。まあ食い違いもあるでしょうが、平壌宣言の「双方は、北東アジア地域の平和と安定を維持、強化するため、互いに協力していく」という項目は最低限、履行していただきたいものです。
余談ではありますが今後、日朝関係が改善した際には訪朝時、酒に注意したほうがよさそうです。昼も夜も酒なので「ヘパリーゼ」は必須です。現地の謎の生薬 がガツンと効く場合はありますが(これはまたの機会に言及します)。
そして現地の観光案内員らは、前日どんなに酔いつぶれていようと翌朝は必ずシャキッとした様子で迎えにくるので、本当に不思議です。
●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。国籍・韓国(出生時は朝鮮籍)、本籍地・朝鮮民主主義人民共和国、出生地・日本という根なし草。いわゆる「在日2世」だが父親が高齢の際に製造されたため、世代的には3~4世。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>
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