アナログからデジタルへ……加藤ミリヤが語る、音楽業界の過渡期を駆け抜けたミューズの本音
――16歳でデビューを果たしてから早10年。記念碑的なアルバム『MUSE』をリリースする彼女が、常に時代の最先端を走ることのできた理由と。
“加藤ミリヤ”と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、「サンプリングという音楽の手法を一般的に伝搬した歌手」だろうか、それとも「とっつきにくそうなシンガー・ソングライター」、あるいは「もの悲しげでありながらも毒気のある女性」だろうか。そのイメージは、見る者/聴く者にとっていかようにも形を変えるだろうが、これから並ぶ彼女の発言に目を向ければ、実直で誠実な印象を抱くかもしれない。それがあったからこそ、加藤ミリヤは音楽活動において10周年という節目を迎えられたのだと思う。「大人なんて信用できない」と歌い始めてから10年、いつしか自分も大人となり、「私がそう思っていた頃の年齢の子たちに、そんな大人だと思われないように」と襟を正す彼女が、『MUSE』と命名した10周年の記念碑的アルバムを発表する。加藤ミリヤ、本誌初登場、本音を語る。
──10周年を迎えた感想は?
加藤ミリヤ(以下、ミリヤ)感謝に尽きます。「私、10年間がんばってきました!」という気持ちじゃなく、加藤ミリヤというひとりの人間を支えてきてくれたみなさんと一緒に迎えられた10周年だと感じています。
──表題曲「M.U.S.E.」は、自身の10年間を振り返る歌詞で構成されていますが、その中に「音楽は嘘つかない」という言葉があります。実際にこの10年間で音楽に嘘はつかれませんでしたか?
ミリヤ あるといえば、あるかな(笑)。たとえどんなに音楽と真摯に向き合っても、どんなアーティストでも報われないときってあると思うんです。それが世の中から理解してもらえず、一方で不真面目に流行に便乗しただけの音楽が、おいしい思いをすることがあるのも音楽業界。でも、私は表面的な部分だけの評価はされたくなかったし、悔しい思いをしながらでも、常に音楽に対しては真面目に対峙してきたつもりです。それでも、ふと我に返って「そんなこと言いつつ、私なんてまだまだじゃん……」と肩を落とすこともありました。
私の周囲には、お手本にしたいと思える素敵な人がたくさんいるんですが、その人たちの良いところだけを集めた人間になりたい!って思うくらいでしたからね。
──するとアルバムのタイトルを”MUSE”としたのは、ある種、自身の願望でもある、と。
ミリヤ 純粋に「そう思ってもらえたらうれしい」という気持ちはあります。10周年を迎え、そもそも私は何になりたかったのか、とデビュー以前のことを思い出したんです。当時高校1年生だった私は、トガっていたこともあり、「ポップミュージックに染まるなんて愚かな行為。私はヒップホップ界のミューズになる!」という野望がありました。アンダーグラウンドシーンで認められて、私は初めて女神になれる──でも、活動を続けていくと、やはり気持ちにも変化が訪れて、アーティストとして良い曲を歌い、良い作品を届けることこそが本当のミューズなんじゃないかなと思うようになって。
私がデビューしてからの10年は、アナログからデジタルへ移行した音楽業界の過渡期でもあったと思うんです。CDが売れた時代に活動するよりも、そういった時代で音楽活動を続ける境遇のほうが、私に向いていたのかな、って。
アルバムを作り終えて、尊敬するアーティストやプロデューサーの方々と共演することができたり、「これが私の10年だったんだな」って感慨深くなり、なんだかすごく報われた気持ちにもなったんです。とはいえ10年、まだまだ青いですけどね。
──苦境に立たされている昨今の音楽業界ですが、11年目からの加藤ミリヤの展望というのは?
ミリヤ あきらめず、そして絶対に腐らないこと。一番肝心なのは、自分自身が納得できる作品を作り続け、良いライブをすること。これからも、その気持ちを忘れず、大切にしていきたいです。
(文/編集部)
(スタイリング/西村哲也(holy.))
(ヘアメイク/ANNA(SHIMA))
加藤ミリヤ(かとう・みりや)
1988年、愛知県生まれ。04年にシングル「Never let go/夜空」でデビュー。BUDDHA BRANDやUAなどの名作をサンプリングした楽曲で注目を集める。音楽活動のほかにも、自身のアパレルブランド「KAWI JAMELE」のデザイナーとしても活躍。
『MUSE』
発売/ソニー 価格初回生産限定盤4500円(+税)、通常盤3650円(+税)
2014年9月8日でデビュー10周年を迎えた加藤ミリヤの新作。中島美嘉やAI、SUGAR SOULらとのコラボ、プロデュースにはDJ KRUSHや☆Taku Takahashi(m-flo)らが名を連ねたディスク1と、既発曲のリミックスのみで構成されたディスク2の2枚組アルバム。
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