「女って怖えぇ」は通じない。男性は嫁姑問題や自身に潜む「女」とどう向き合うべきか
■「選ばれる」立場になると、男性も「女」度が高くなる
――本の中で「他人を嫉妬し、裏表がある」といった人間のネガティブな側面を「女」と定義されていましたが、「女」の部分は男性にもありますよね。男性の「女」の部分が表面的には無視され、女性の「女」の部分が取り沙汰されてきたのは、どうしてなんでしょうか?
水島 「男の嫉妬は女より怖い」とよくいわれますが、基本的に閉鎖社会の中で「選ばれる」立場に置かれると、男も女も「女」になる。だから永田町は嫉妬が渦巻くといいますよね。ああいう場所ではすでに表面化しているわけですよ。そうではないところだと、男性は自分で努力して社会的地位を上げていくことができるので、「相手に勝つ」ことより「自分自身に力をつける」ということにエネルギーが向けられていく。ただ、男性もひとたび「選ばれる」という立場に置くと、限りなく「女」度が高くなると思います。
――今の時代、高学歴であれば大企業に入れる、年功序列で給料が上がるといった方程式が崩れています。そういった事象を大局的に見ると、男性の「女」度が……。
水島 高くなっているじゃないでしょうかね。
――個人的な意見ですが、ネット上の「男性による女性叩き」の声が最近大きくなっているのも、男性が自分たちが「選ばれる」立場になった反動なのかなと。
水島 もし本当にネット上で女性叩きが多いのだとしたら、女性たちが入ってくることによって自分の選ばれる難易度が高くなったと男性が思い始めたのではないでしょうか。昔だったらそれこそ男性と女性は住む世界が違ったわけです。いわば「男性の世界」に女性が入ってきたので、男性が女性の足を引っ張るということなのかもしれない。
――それは、女性が男性の世界へ入っていくことによって、男性が「割を食っている」と思っているということですか?
水島 そういう被害者意識があるのかなと思います。
―― 一方で、男性は女性の「女」の部分を見ると、「女って怖えぇ」と冷笑するのをネットでもよく見かけるのですが、あれはどういう心理なのでしょうか。
水島 その男性の「女」度が高いんじゃないでしょうかね。「女」度が低ければ、わざわざ「女って怖えぇ」と書かないですもの。
――男性は自分の「女」の部分とどう向き合い、癒やしていけばいいのでしょうか?
水島 まずは、自分の「女」度が高くなっていることに気づくのが第一歩です。そして、「女」度が高いことは長い目で見ると決して良い結果を生まないので、「女」度を下げる努力をする。その努力とは、「自分には心の傷があって、こういう場面でうずくのだな」とか、「選ばれなければ自分の価値がないと思い込んでいる。案外自己肯定感が低いんだな」と自分を優しい目で見ることから始まります。あとは、できるだけ「女」度の低い人と付き合うようにする。そうやって人生全般に安心感を持っていくのがポイントだと思います。
(取材・文=小島かほり)
※「選ばれる性」としての女性
水島氏は本書の中で、女性の中の「女」度が高くなっていく要因のひとつとして、女性が「男性から選ばれる性」であることを指摘している。「どの男性に選ばれるか」によって女性の社会的な地位が決まるという風潮は、結婚だけでなく、あらゆる面で今なお残っている。
水島広子(みずしま・ひろこ)
精神科医。対人関係療法専門クリニック院長、慶應義塾大学医学部非常勤講師(精神神経科)、アティテューディナル・ヒーリング・ジャパン(AHJ)代表。2000年~05年には、衆議院議員として児童虐待防止法の抜本的改正をはじめ、数々の法案の修正実現に尽力。
『整理整頓 女子の人間関係』
「嫉妬して張り合ってくる『女』」「ママ友で仲間はずれに」「男性にだけいい顔をする後輩」などの人間関係のつまずきに、それぞれ「とりあえずの対処法」「攻撃を受けない方法」「本来の意味での良い関係を築くには」という3ステップで解説。自身の中に渦巻く嫉妬や被害者意識を癒やし、相手への尊敬と適度な距離感を保つためのアプローチが書かれている。女性だけでなく、男性にも新たな発見がある1冊。
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