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日刊サイゾー トップ > 海外  > 北朝鮮政府高官の素顔
根なし草ライター・安宿緑の「平壌でムーンウォーク」

中国人出稼ぎ労働者の中に、なぜか北朝鮮の政府高官が……合縁奇縁な中国高速バスの旅

 今回の訪朝では前回、前々回に比べてしょぼい取材しかできなかった上、同行した他媒体の記者からは連日イビられていたので、アディショナルタイムで同点ゴールと決勝ゴールを連チャンで決めたような気分になりました。あきらめたら、そこで試合終了なのです。

 特定を防ぐために所属機関などの詳細は控えますが、彼は目的地に着くまでの2時間ほどの間、いろんなことを話してくれました。やはり一般の人民とは違って、開けた感覚の持ち主で、その口から語られるエピソードは興味深いものばかりでした。

 世界で働くのが夢で、国際関係と英語を学べる大学を志望した。といっても、北朝鮮では大学受験用の学習塾などはないので、大学教授を訪ねて個人授業を受けるのが普通だった。2年間製版のアルバイトをしながら受験勉強をした。

 晴れて卒業すると、せっかく英語を学んだのに赴任先が英語の通じない国だった。しかも、かなり長くいた。

 モンゴルに赴任したこともあるが、当時は人の住む場所じゃなかった。羊くさいし、夏は暑くて冬は寒い。いろいろと過酷すぎた。今はどうなんだろうな。

 ソビエト崩壊を間近で見た。建物に退避させられて、窓から国旗が降ろされていく光景をおびえながら眺めた……。

 さらに当時、東京の朝鮮総連本部会館をモンゴル企業が落札したニュースで持ち切りだったため、「一体あれはどうなってるんだ?」としきりに聞かれましたが、そりゃこっちが聞きたいですよという感じでした。

 私は、取材うんぬんはさておき、彼と話せたことを純粋にうれしく思いました。北朝鮮の高官といえば、「人を殺すことも厭わない冷徹なコワモテ集団」というのが世間のイメージかと思います。高官はほかにも何人か会ったことはありますが、意外と気さくなのです(もちろん厳しい感じの人もおります)。ひょっとして韓国スパイだと思われていたかもしれませんが……。

 男性はバスを降りて野球帽をかぶると、軽く会釈をして迎えの元に去っていきました。その姿は、よくいる中国のビジネスマンのようでした。

 そもそもなぜ、彼のような人が専用車ではなく高速バスで中国の地方に向かっていたのか――? それには深い理由があったのですが、仕事上でつながりのある日本の外交関係者からは「公表してしまうと、その人に迷惑がかかる」とアドバイスを頂いたので、今回はここまでにしておきます。

●やす・やどろく
ライター、編集者。元朝鮮青年同盟中央委員。政治や民族問題に疲れ、その狭間にある人間模様の観察に主眼を置く。国籍・韓国(出生時は朝鮮籍)、本籍地・朝鮮民主主義人民共和国、出生地・日本という根なし草。いわゆる「在日2世」だが父親が高齢の際に製造されたため、世代的には3~4世。しばしば3重スパイ扱いされるのが悩み。日朝和平、北朝鮮のGDP向上、南北平和統一を願う一市民。ペンネームは実家が経営していたラブホテルの屋号(※とっくに倒産)。<http://blog.livedoor.jp/yasgreen/>

最終更新:2014/10/29 16:36
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