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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.290

世界は「使われなかった性技」であふれている! ピンク映画50周年記念『色道四十八手 たからぶね』

takarabune_02.jpgミステリアスな美しさを感じさせる千春(愛田奈々)。実家はなく、男たちの間をさまよい続ける寄る辺なき女だ。

 若い夫婦と熟年夫婦のそれぞれの性の営みを描いたピンク映画ならではのセックスコメディだが、4人の男女の絡みの他にも、江戸時代から伝わる春画の世界が男女のモデル(野村貴浩、ほたる)によって再現される。昔々、春画は性の教科書として花嫁道具のひとつだったなどのエロトリビアも盛り込まれる。カレーライスに添えられた福神漬けのようなサービスがうれしい。『たからぶね』は1962年に製作・公開された『肉体の市場』から始まるピンク映画50年の歴史だけでなく、日本の性文化そのものを俯瞰してみせる。数々の性戯の末に、自分も自分のご先祖さまも生まれてきたのだという連綿たる性の歴史がここにある。なんと広くて深い快楽の海だろう。そんな大海原の中、不思議な巡り合わせで千春と一夫は出会ったのだ。一夫は千春と過ごした甘い日々が愛しくて仕方ない。できれば、2人で“宝船”を試してみたかった。宝船に乗った千春は、一体どんな表情を見せただろうか。2人で一緒に舟を漕いで、もっともっと沖まで出てみたかった。この世界には、まだ2人が知らない秘宝や喜びがいっぱい隠されているのだ。

 ピンク映画50周年記念作品『たからぶね』をプロデュースしたのは、ピンク映画専門誌「PG」を25年間にわたって自費出版し続けている林田義行、関西を拠点にしたピンク映画の無料情報誌「ぴんくりんく」を発行している太田耕耘キの両氏。『たからぶね』はもともとは渡辺監督が『喪服の未亡人 ほしいの…』(08)を撮り終えた後、新作として温めていた企画だった。だが、近年のピンク映画界は製作本数の減少など状況が大きく変わったため、脚本は完成したもののお蔵入り状態に。そこで渡辺監督と交流の深かった太田氏が林田氏に声を掛け、ピンク映画史のメモリアル作品として共同プロデュースが実現した。

「映画をプロデュースするのは初めての体験でしたが、ピンク映画50周年という節目の作品に携われるなんて希有なことだし、脚本も面白かったので、喜んで引き受けました。まぁ、引き受けたものの大変でしたが(苦笑)。ピンク映画50周年にあたる2012年には製作の目処が立たず、最終的に『ぴんくりんく』と『PG』での自主制作という形になったんです。また撮影に入る直前に渡辺監督が亡くなるという思いがけない事態にもなりましたが、入院中だった渡辺監督から『映画を完成させろ』と指名された脚本家の井川さんが独自色を出しながらも、渡辺監督が生前語っていた企画意図も汲み取った作品に仕上げてくれました。ゆくゆくは成人館でも上映したいと考えていますが、自主制作ゆえに契約館があるわけでもなく、この映画を上映してもらう営業をかけるところからのスタート。いわば、ピンク映画の原点に戻ったということです。まずは一般館での上映から始めるので、ピンク映画を知らない若い世代や女性の方たちにもピンク映画の面白さを感じてもらえるとうれしいですね」(林田氏)

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