グローバル人材育成に弊害も……急激な円安で、海外留学生が激減する!?
#海外
3月に発表された文部科学省の「日本人の海外留学者数」に関する統計によると、2011年時点で海外に留学中の日本人は約5万7,501人で、7年連続で前年を下回る結果となった。
少子高齢化や人口減少により国内市場が低迷する中、日本企業にとって海外進出の重要性は日々高まっている。しかし、各企業の採用担当者からは、グローバル人材の不足を嘆く声も聞こえてくる。文部科学省は、東京五輪が開催される6年後に留学生を倍増させる計画を立て、26年度の留学に関する予算を前年度比20億円増の355億円に補強したが、どれほどの効果が期待できるのかは定かではない。
海外留学生の減少の背景には、若者に内向き志向が増えていることなどが指摘されているが、さらに切実な理由で留学を諦めなければならない者も増えている。
米ミシガン州のコミュニティカレッジに留学中だったAさん(女性・23歳)は、4年間の留学計画を2年でを切り上げ、帰国したばかりだ。その理由について、こう話す。
「渡米からの2年間で、ドルは円に対して3割以上高くなった。生活費と学費は親からの仕送りと月2万円ほどの奨学金でまかなっていたんですが、為替差損でまったく足りなくなってしまった。これほど急激に円安になるとは思ってませんでした。うちの家はごく普通のサラリーマン家庭で、それ以上の仕送りは無理。学生ビザではアルバイトもできないし、非合法で働いたとしても課題が多く出されるアメリカの大学で、外国人が学業とバイトを両立するのはかなり厳しい。当初は私立の4年制大学に編入しようと思っていましたが、コミュニティカレッジ修了を機に帰国を決めました」
第2次安倍政権発足以降の円安傾向により、国内の輸入品価格だけでなく、留学費用も割高となっているのだ。Aさんによると、日本人留学生の間で、私立大学から学費の安い公立大学に編入する動きもあるという。
一方、都内で留学エージェントとして働く男性(32歳)もこう明かす。
「留学を希望する人にとって、円安が大きな向かい風になっているのは事実ですね。今の為替レートでアメリカの大学に私費留学するとなると、公立校でも生活費も含め年間300万円近くはかかる。ただ、物価水準の高い国への留学が減る一方で、物価の安いフィリピンやマレーシアなどへの語学留学はむしろ増えている印象です」
グローバル化に意欲を見せる安倍政権にとって、隠れた円安デメリットのひとつと言えそうだ。
(文=牧野源)
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