「売れているものに乗らないスタンスに……」『新・週刊フジテレビ批評』に見る、フジテレビの自己改革
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ほんの少し前まで、「テレビ」といえば、“フジテレビ的”なものをイメージしていた。見たことのないものを見せ、新しい価値観を生み出してきた冒険と挑戦に、幾度もワクワクさせられてきた。
そんな“黄金時代”が遠い昔のように、いまフジテレビが迷走を続けているように見える。最低限の視聴率が約束される(であろう)過去の遺産を食いつぶすように消費する一方で、新機軸の番組は視聴率が伴わなければ甲斐性なくすぐに打ち切りを決めてしまう。いわば、視聴率に踊らされているかのようだ。
そもそも、あくまでも業界内の指針だった視聴率を、今のように一般の視聴者までもが注目するきっかけを作ったのはフジである。フジ絶頂の80年代後半、自分たちの威光を示すために用いたのが、「視聴率三冠王」という概念だった。これはゴールデン、プライム、全日の各区分を制した時に自称したもので、フジは82年から12年間、民放の「三冠王」であった。しかし、その後、日テレが10年にわたりノンプライムを含めた「四冠王」を奪取。さらに、04年以降はフジが返り咲いたが、11年には再び日テレが勝利。そしてついに、テレビ朝日が躍進。フジは「三冠王」を逃すどころか、民放3位の座に降格した。自らの権威を示すために使い始めた「視聴率三冠王」の概念が、自らの失墜を如実に表してしまっているのはなんとも皮肉だ。
フジには『新・週刊フジテレビ批評』という、自局を自ら批評する“自己批評番組”が存在する。この手の番組は、『はい!テレビ朝日です』(テレビ朝日系)や『TBSレビュー』(TBS系)など各局にも存在するが、それらが月1回や隔週の放送だったり、20分など短い時間での放送だったりするのに比べ、『新・週刊フジテレビ批評』は毎週1時間放送されている。
9月20日、27日の放送では「The批評対談スペシャル」として、識者による対談が長めの時間を割いて放送された。第1弾の20日の放送では、元BPO委員の水島久光氏、放送作家の高須光聖氏、ライターの吉田潮氏、そして『ダウンタウンのごっつええ感じ』『笑う犬の冒険』『トリビアの泉』などフジを代表するバラエティ番組の数々を手掛け、現在はフジテレビ・バラエティ制作センター部長の小松純也氏が顔をそろえ、「バラエティの未来のために」と題し、特にフジテレビのバラエティ番組の今後について話し合った。続く27日の第2弾では、批評家の宇野常寛氏、ドラマ評論家の木村隆志氏、早稲田大学教授の岡室美奈子氏による「今年のドラマを振り返る」鼎談が行われた。
自局の未来を、識者が集まって討論したものが土曜早朝に放送されるという状況を「コントとの設定としてはなかなかのもの」と笑う小松氏。そんなやや引いたスタンスで参加しているかのように見えた小松氏だが、いざ討論が始まると、口調こそ静かで落ち着いていたものの、誰よりも熱かった。
まず視聴者から見た、今のフジテレビの問題点が挙げられていく。
「同じ人ばかりが出ている」「内輪受け」「飽きた」「深夜番組の面白さがなくなった」「保守的」など辛らつだが、ある意味で的確な批判が次々と寄せられていく。ライターの吉田氏も「壮大な内輪受け感がある。それについていけたら面白いが、そうでないと楽しめない。内輪受け感が他局より強い」と指摘する。元BPOの水島氏も、フジのバラエティの特徴を「スーパースター列伝」と形容し、その功罪を挙げる。
それに対し、高須氏が「フジテレビは、演者さんへの愛がすごい」から、良くも悪くもそうなってしまうとフォローすると、いよいよ小松氏が口を開く。
「フジテレビの考え方は人間中心。人間に目を向けることだと、僕らは思っています。その人間の生き様が、世の中にメッセージを発信できるのではないかと。人間中心に作って世の中にメッセージとして伝わるというのが、フジテレビの考え方なんです」
そして「売れているものに乗らないスタンスに、明確に変わろうとしています」と続ける。
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