動物虐待防止協会が煽ったカンガルー大虐殺映画!!『荒野の千鳥足』が43年の歳月を経て日本初公開
#映画 #パンドラ映画館
ヤコペッティ監督が手掛けた『世界残酷物語』(61)をはじめとするドキュメンタリー作品は“モンド映画”として一時代を築いた。世界各地に伝わる奇習・珍祭を伝えるもので、祭りの生け贄として牛の首が切り落とされるなどの残酷シーンが売りとなっていた。見世物感覚で多くの人たちが映画館に足を運んだ。そんなヤコペッティ風味のモンド映画に、フランツ・カフカを思わせる不条理文学的な格調を与えたのがオーストラリア&米国の合作映画『荒野の千鳥足』(原題:Wake In Fright)だ。1971年に製作された本作はカンヌ映画祭に出品され反響を呼んだが、43年の歳月を経て日本でもようやく初公開される。
オーストラリアの雄大すぎる大平原を舞台にした本作の最大の見せ場は、酔っぱらって千鳥足状態になった主人公たちがジープに乗ってカンガルー狩りに繰り出す場面。草食動物であるカンガルーたちが、逃げることもなく次々とライフルの餌食となって倒れていく。動物愛護家なら泡を吹いて悶絶してしまいそうな大殺戮シーンである。調子に乗った主人公たちはカンガルーを相手に相撲まで取ってしまう。カンヌ映画祭では評論家たちに絶賛された本作だが、いつもは陽気で大らかなオージーたちは自国の暗黒面をあまりに赤裸々に映し出した内容を嫌い、公開から10週間後には豪州すべての映画館からこのフィルムは姿を消すことになった。米国でも興行に失敗し、オリジナルネガは紛失、プリントの保存状態も悪く、人々の記憶から忘れ去られた幻の映画と化していった。ピッツバーグの倉庫の片隅で“廃棄処分”のステッカーを貼られていたオリジナルネガが発見されたのが2002年。長い時間を掛けてレストア作業が行なわれ、悪夢のような映画が現代に甦った。
『荒野の千鳥足』の主人公はオーストラリアのど田舎で教員をしている青年ジョン(ゲーリー・ボンド)。オープニングシーンでカメラがジョンの勤める小学校を捉えるが、小さな校舎の他には駅のプラットホームがぽつんとあり、他にはジョンが下宿している安宿が一軒あるだけ。こんな場所で人間がどうやって暮らしているのかと思ってしまうような不毛地帯だ。クリスマス休暇を迎え、子どもたちは大喜びで学校を飛び出していく。いや、子どもたち以上にこの休暇を渇望していたのはジョンだった。子どもたちに教科書を読ませるだけの死ぬほど退屈な日々を脱し、シドニーで暮らす恋人としっぽりと年末年始を過ごすことができるのだ。喜びさんで1日数本しかない列車に乗り込むジョン。シドニーまでの道程は遠いため、ヤバと呼ばれる炭坑町に途中下車して一泊することに。喉の渇きを癒そうとパブに入るが、それが長い長い悪夢の始まりだった。気のいいヤバの人たちから、死ぬほどビールを奢られまくるジョン。ズブズブと底なしのビール地獄にハマっていく。
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