松木安太郎の“応援解説”が冴えわたる!『不躾ですが、ドキドキな発表の瞬間立ち会わせて下さい。』
#サンドウィッチマン #テレビ裏ガイド #てれびのスキマ
ボクシングのプロライセンスを目指す33歳の青年がいた。彼の名は上原裕三。すかさず、「上原裕三くん、名前は野球っぽいけどね」と、松木のいらないナレーションが入る。プロテストは、33歳までという年齢制限がある。だから、これが最後の挑戦だ。
「33歳っていうと、俺引退した歳だよ」と松木。思わず伊達が「ナレーションの手数多すぎるわ!」とツッコむ。
これまでの人生で、いろいろなことから逃げてきたという上原。“やり遂げた”ことが一つもなかった。だから、プロテストに合格すれば、自分が変われるのではないかと、挑戦を続けてきたのだという。
「わっかるなー!」
と、真剣なトーンの上原と対照的な軽いリアクション。もちろん松木である。いよいよプロテスト当日、多くの受験者がいる控室の映像を見ながら「ファッションでは負けてないぞ、頑張れ!」「まず髪型が強そうだよね」などと軽口を叩くナレーション。上原が心境を語りだすと「ちょっと揺れながらしゃべるところがあるよね」なんて言っている。ついに、最後のテストであるスパーリングに向かう真剣な表情がアップで映し出されると「彼はホント、キレイな奥二重だよね」。
いざスパーリングが始まると、そこはスポーツ解説者。
「消極的だなぁ。ストレスたまる試合だね」
「気持ちで負けるな!」
「いやー、いいパンチ入ったね! リプレイ見よう、リプレイ!」
「そう、前へ前へ!」
と、的確で熱い解説が入っていく。
スパーリングの勝敗とプロテストの合否は無関係とはいえ、相手からダウンを奪い、リタイヤに追い込んだ上原。その表情は、充実感でいっぱいだった。合格すれば自分が変われるかもと語っていた上原は、合格発表を待たずに“やり遂げた”実感を得て言った。
「人生、変わった気がします!」
そんな姿に、富澤は涙を浮かべるのだった。
どんどんと複雑化する世の中で、提供されるコンテンツに対して、われわれはとかく斜に構え、ひねくれた見方をしがちだ。けれど、一方で単純に笑いたいし、単純に泣きたいし、単純に楽しみたいとも思っている。松木の“応援”は、いわば“オヤジ”を具現化したものだ。目の前のことに脊髄反射的に反応し、たとえ頭の中で複雑なことを考えていたとしても、実際に出てくる言葉は、ごくごく単純でシンプルな言葉ばかりだ。言ってみれば「バカ」な言動だ。けれど、そんな“オヤジ”を誰しもが自分の中に飼っているし、どこかで憧れている。バカになって素直に楽しむこと。松木は、そんな世の中の見方を“応援”しているのかもしれない。「よーし、出しきれよ! 全部出し切れ!」と。
(文=てれびのスキマ <http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/>)
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