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鬼才キム・ギドクの“秘蔵っ子”インタビュー

友好か忠誠か――『レッド・ファミリー』北朝鮮スパイ一家が問いかける“家族の意味” 

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――南と北の家族は、最初から仲が良かったわけではありません。でも、若い二人(チャンスとミンジ)をきっかけに、お互いのことを知っていきます。その設定には、何か意図があるように見えますが……。

イ監督 若い人は南北の対話や交流を望んでいる、というように見せようとしました。チャンスとミンジは、すべての登場人物の中で、最もイデオロギーから自由なんです。単純に、若くて幼いからです。彼らには、まだ白紙の部分がある。私は、軍事政権時代に思想教育をたくさん受けた世代です。でも、最近の若い世代は、そういう教育をあまり受けていません。純粋なチャンスとミンジが成長したら、もっといい世の中を望むだろう。そんなメッセージを込めました。

 映画の序盤に、窓に激突して死んだ鳥が出てきます。そのとき、スパイの老人が「死んだ鳥が自分の姿と重なる」とつぶやきますが、実はあのシーン、物語の結末の伏線になっているんですよ。鳥が幻を見ながら死んだように、虚像に向かって走り続けた、人はみな最後は死ぬ。ただ、その鳥を埋めてあげるのは、チャンスとミンジです。思想教育を受けた世代、つまり虚像に向かって走り続けた人たちを慰安するのは、若い世代なんです。

――『レッド・ファミリー』は、理念を超えた家族愛が一つのテーマだと思います。南北関係、日韓関係はともにギスギスしていますが、それを変えるためのヒントがあるようにも感じました。

イ監督 南北関係については、ただただ平和的な統一を願っています。南北が分断したのは、理念の違いに原因があると思うんです。でも反省しなければならないのは、一つの失敗で生まれたトラウマは、何十年、何百年と続くということ。日本が戦争で受けた核の痛みは、今も続いていると思います。私たちも植民地時代のトラウマが続いています。もちろん、韓国が加害者として誰かを傷つけたこともあるでしょう。いわば“苦痛のモンスター”がたくさんいるわけです。その痛みの起源がどこにあるのかはわかりません。でも、確実に起源はあります。トラウマが続かないように、その起源にまでさかのぼって、最大限に解消すべきです。痛みの中で生きていくなんて、かわいそうじゃないですか。

 私が『レッド・ファミリー』でイデオロギーを解体させたかった理由も、現代は大切な個々人が見失われる時代だと思ったからです。世の中が発達して、便利な生活が送れるようになったと感じていても、変化したことは何もないように思う。だって、今も世界中で戦争が続いているんですよ。それは、とても恐ろしいことです。いずれにしても今は、すべての国がもっと反省しなければならない時代なのではないでしょうか。でも、誰か一人が反省したら、その人が弱者になってしまうジレンマがある。日韓関係においても、もしかしたらそんなジレンマがあるのかもしれない。

――『レッド・ファミリー』は、本当にいろんなことを感じさせてくれる映画だと思います。これから見ようと考えている人は、どんなことを知っておくべきでしょうか?

イ監督 いやいや、何も考えずに見てほしいですね。色眼鏡をかける必要はないと思います。なぜなら、偏見を捨てる映画なのだから。見る人にも偏見を捨てて見てほしいです。断っておきますが、この作品はあくまでも娯楽映画ですからね(笑)。重いといえば重いですが、力まずに見てもらえればうれしいですね。
(取材・文=呉承鎬)

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●『レッド・ファミリー』
監督:イ・ジュヒョン エグゼクティブ・プロデューサー/脚本/編集:キム・ギドク
プロデューサー:キム・ドンフ 
キャスト:キム・ユミ ソン・ビョンホ チョン・ウ パク・ソヨンほか
10月4日(土)新宿武蔵野館ほか全国順次公開

(c) 2013 KIM Ki-duk Film. All Rights Reserved.
公式サイト <http://redfamily.gaga.ne.jp/>

最終更新:2015/08/27 12:32
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