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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.288

天才・楳図かずお19年ぶりとなる最新作『マザー』。家族に対する“罪悪感”がモンスター化する恐怖!

mother_umezu01.jpg楳図かずお監督デビュー作『マザー』。赤白のボーダーシャツを着た片岡愛之助は、『シベリア超特急5』『築城せよ!』とカルトな主演作が多い。

 天才クリエイター・楳図かずおにとって、19年ぶりとなる最新作『マザー』。人類滅亡の黙示録『14歳』の連載を1995年に終えて以降、持病である腱鞘炎の悪化から漫画家としては休筆状態が続いているが、最新作『マザー』は楳図先生が脚本、絵コンテ、キャスティングから手掛けたオリジナル作品であり、77歳での映画監督デビュー作でもある。『半沢直樹』(TBS系)のおねえキャラでブレイクした片岡愛之助に赤白のボーダーシャツを着せることで自身の分身に仕立て、楳図ワールドの恐怖の源泉へと案内していく趣向だ。楳図ワールドを楳図先生自身が実写化するとどうなるのかという点で、非常に興味を惹かれる。

 主人公は人気漫画家の楳図かずお(片岡愛之助)。恐怖漫画の第一人者として知られる楳図のアトリエ兼自宅を、新人編集者の若草さくら(舞羽美海)が訪ねる。さくらは楳図作品の大ファンで、「楳図作品がどのようにして生まれたのか、楳図先生の生い立ちを一冊の本にまとめたい」と申し出る。さくらのインタビューに答える楳図。和歌山県の高野山で生まれたこと、母親が生後7カ月の楳図に鉛筆を持たせたこと、父親が地元に言い伝えられる不思議な伝説を寝物語として語ってくれたこと……。幼少期の体験が楳図作品に強く影響を与えていた。

 楳図は漫画家となり、東京に上京。自分にとって最愛の存在である母・イチエ(真行寺君枝)をひとりぼっちにさせてしまったという罪悪感を感じながらも、楳図は漫画執筆に没頭する日々を送る。連載の仕事がひと段落し、入院中のイチエに付き添うが、老いたイチエは「自分の葬式に行ってきたよ。イギリスの女王さまも来てくれたのよ」「お礼参りに行ってきたの。高野山のあちこちへ」「お前のところへも行くよ」と謎めいた言葉を残して、あの世へと旅立つ。母との別れを振り返る楳図の口から「幽霊でもいいから、母にもう一度逢いたかった」という言葉がつぶやかれる。取材意欲を掻き立てられたさくらは楳図の生まれ故郷を訪ねるが、そこで信じられない怪奇現象に遭遇。楳図の心の中の想いが具象化し、母・イチエが蘇ったのだ。懐かしくも恐ろしい姿となってこの世に現われたイチエ。これは楳図の妄想の産物なのか? それとも山に潜んでいた物の怪なのか? さらには楳図の生誕に関する秘密も明らかになっていく。

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