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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.287

大嫌いな人間をぶっ殺してすっきりしませんか? DVD化未定の超・問題作『殺人ワークショップ』

satsujinworkshop01.jpg白石晃士監督の『殺人ワークショップ』。ワークショップ参加者たちは、自分の中に生じた殺意を解放するよう講師から指導される。

 殺人ワークショップへようこそ。人間誰しも「こいつ、殺してやりたい」「こんなヤツ、いない方が世の中のためだ」と思ったことが一度や二度はあるはず。格差社会、競争社会の中でストレスを強いられる現代人ならば、なおさらだろう。自分の中に芽生えた殺意をどう処理すればいいのか悩んでいる人にぴったりなのが、この体験型講座『殺人ワークショップ』。腕力に自信がない人、これまで虫も殺したことがないという初心者でも大丈夫。実戦経験豊富な講師が最後まできっちり後押しして見届けてくれますから。ワークショップ参加者は、ワークショップ期間中に「殺したい」と思った相手を必ず仕留めることができるのです。

 こんな危険なワークショップを考案したのは、白石晃士監督。あらゆる超常現象を盛り込んだ『オカルト』(09)やブレイク直前の「ももいろクローバー」に廃校レポートさせた『シロメ』(10)など斬新なホラー作品を生み出してきた気鋭の映画監督だ。白石監督作品の多くは、POVスタイルと呼ばれる主観映像で構成されたもの。ハンディカメラを持つカメラマンの視点から物語は語られ、ドキュメンタリー映像さながらの臨場感が楽しめる。低予算を逆手にとった演出方法で、白石監督はこのジャンルの第一人者。『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズはレンタルビデオ店の人気商品となっており、今年5月には『戦慄怪奇ファイル コワすぎ! 史上最凶の劇場版』が劇場公開。さらには『コワすぎ!』の豪華スピンオフである、オール韓国ロケ作品『ある優しき殺人者の記録』が9月6日から劇場公開されたばかり。虚構と現実との境界をブチ壊す問題作を次々と発表している、今もっとも尖った映画監督なのだ。

 『殺人ワークショップ』は、実際に白石監督が講師をつとめた映画俳優養成のためのワークショップでの実習作品。劇中で講師をつとめる江野役の宇野祥平は、白石監督の『オカルト』や『超・悪人』(11)に主演している個性派俳優。虚構と現実を隔てる壁だけでなく、モラルや常識の壁もブチ壊してしまう白石ワールドの代弁者だ。そして、それ以外のキャストは実際のワークショップ参加者たちが演じている。そのため妙なリアリティーが作品に漂う。芝居をすることを生活の糧としているプロの俳優にはない、素人臭さと緊張感が作品中に溢れ、あたかも“殺人ワークショップ”は実在するのではないかという錯覚に、観ている側は陥ってしまうのだ。

 都内のマンションの一室で開かれた“殺人ワークショップ”に若い男女が集まる。法を犯してまで人間を殺したいという動機はさまざま。同棲相手から毎日のようにDVを受けている女性、親友を自殺に追い込んだイジメっ子への復讐を誓う男性、できちゃった婚して幸せそうな生活を送る元恋人への恨みを抱える者……。講師の江野は能天気な関西弁でこうまくしたてる。「よし、みんな任せとき! ワークショップ参加者みんなで協力しあって、1人ずつ殺っていくんや。数ではこっちが上回るんから、絶対大丈夫や」。江野はマンションのドアに鍵を掛けた。殺人ワークショップの始まりだ。卒業制作としての殺人を無事に完遂するまで、誰もこのワークショップから逃げ出すことはできない。

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