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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.287

大嫌いな人間をぶっ殺してすっきりしませんか? DVD化未定の超・問題作『殺人ワークショップ』

satsujinworkshop02.jpg『オカルト』『超・悪人』で白石作品ファンにはおなじみの江野(宇野祥平)。渋谷のスクランブル交差点に、あの危険な男が帰ってきた!

 殺人ワークショップの講義内容は分かりやすく、とても実践的。講師は情熱を持って、参加者ひとり一人を指導する。殺人においていちばん気を付けたいのは、殺す直前になって躊躇してしまうこと。ビビって腰が引けてしまうと、相手から逆襲されてしまう。そこで江野は参加者たちにホンモノの刃物を握らせ、人間の肉体を刺すトレーニングを始める。「刺して抜く! 刺して抜く!」。江野の容赦ない怒声の前に、実戦トレーニングを強いられる参加者たち。ワークショップ会場に血のムクロが転がる。さっきまで呼吸をしていた人間が、冷たい肉塊と化していく。もう、これでみんな共犯者だ。ワークショップのガチぶりに恐れをなした者は、容赦なく江野の餌食に。さらにムクロが増えていく。人を殺すためにワークショップに参加したのに、ハンパな覚悟しかなかった者は自分の命を落としていく。人を殺すには、自分も死ぬ覚悟がないとダメなのだ。

 江野の指導方法はワークショップというよりも、新興宗教や自己啓発セミナーの合宿によく似ている。参加者たちの携帯電話を預かり、外部と連絡できないようにした上で、マンションの一室に監禁。恐怖と暴力で支配し、参加者たちのプライドをズタズタにすれば、短期間で簡単に洗脳できてしまう。目標(殺人)をクリアできれば解放されることから、参加者たちは当初通りにターゲットに襲い掛かるしかない。江野は参加者たちのトレーニング成果をただじっと見つめるだけだ。

 『コワすぎ! 史上最凶の劇場版』は低予算実写映画ながら、『もののけ姫』(97)や『新世紀ヱヴァンゲリヲン』シリーズを思わせる壮大なスケール感を見せた。「フェイクドキュメンタリー形式を使えば、撮れないものはない」と白石監督は大胆不敵に語る。ただし、フェイクドキュメンタリー形式には、「なぜカメラがここにあるのか」という説明が必要だった。撮影現場で起きた出来事という設定が求められた。だが、今回の『殺人ワークショップ』には『コワすぎ!』シリーズや『ある優しき殺人者の記録』でおなじみのカメラマン田代(白石晃士監督)は登場しないし、その必要もない。それは『殺人ワークショップ』というタイトルに興味を抱いて劇場に足を運んだ時点で、観客はすでに“殺人ワークショップ”の参加者のひとりとなっているからだ。人の殺し方に関心を持つ観客の好奇心に満ちた瞳がカメラとなり、瞳の奥の網膜にリアルな映像体験として焼き付いていく。『殺人ワークショップ』はカメラという設定なしでフェイクドキュメンタリーの面白さを活かした画期的な作品になっている。

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