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深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.286

CMが軍事独裁政権を倒した実録ドラマ『NO』。これは政治キャンペーンか、一種の洗脳なのか?

no_movie03.jpg「NO」陣営に雇われたレネ(ガエル・ガルシア・ベルナル)らフリーのCM制作スタッフ。戦いが終わった後は『七人の侍』(54)のような心境か。

 もうひとつは、テレビでのキャンペーン合戦に「NO」陣営は劇的勝利を収めることになるが、観客は主人公レネが味わうはずの高揚感を共有することができないという点。15年間にわたるピノチェトの独裁政権に終止符を打つことができた「NO」陣営は誰もが勝利の美酒に酔いしれるが、勝利の立役者であるはずのレネは自分のCM理論が正しかったことを確認して一瞬だけ微笑むが、すぐに醒めた表情に戻る。そして、足早に「NO」陣営から去っていく。CMが持つ影響力をフル活用して視聴者を煽っただけであって、チリ国民が本当の意味での民主主義に目覚めたわけではないことをレネは誰よりも分かっていたからだ。レネが帰る場所は、CMの製作現場しかない。「YES」陣営に協力していた上司グスマンと一緒に、また新しいCMを作る日々が始まる。レネにとってCMとは自分が食べていくための手段でしかないのだ。
(文=長野辰次)

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『NO ノー』
オリジナル戯曲/アントニオ・スカルメタ 脚本/ペドロ・ペイラノ 監督/パブロ・ラライン 出演/ガエル・ガルシア・ベルナル、アルフレド・カストロ、アントニオ・セヘルス、ルイス・ニェッコ、マルシアル・タグレ 配給/マジックアワー 8月30日よりヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開中 (c)2012Participant Media No Holdings,LLC.
http://www.magichour.co.jp/no

最終更新:2014/09/05 16:48
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