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特撮ヒーロー“中の人”の悲哀と不屈の精神 唐沢寿明主演『イン・ザ・ヒーロー』

inthehero.jpg『イン・ザ・ヒーロー』(C)2014 Team REAL HERO

 今週取り上げる最新映画は、「アクション映画は若者だけのものじゃない!」とばかりに、タフな中年の主人公が派手な立ち回りと真の男気を見せてくれる2本。年相応に漂う哀愁もまた、作品の滋味として楽しみたい。


 『イン・ザ・ヒーロー』(9月6日公開)は、唐沢寿明が『20世紀少年』シリーズ以来5年ぶりに映画主演を務めたオリジナル作品。戦隊ヒーローなどの特殊スーツを着込んで演じるスーツアクターの渉(唐沢)は、25年のキャリアの中で一度も顔出しでの出演がかなわず、愛想を尽かした妻子には逃げられてしまう。後輩スーツアクターらの指導も行う渉は、成り行きで新人俳優・リョウ(福士蒼汰)のアクションを鍛えることに。渉の指導によりリョウはハリウッド製アクション大作のオーディションに合格するが、その映画の撮影で命を落としかねない危険なスタントを要求されたスター俳優が降板したことで、渉に急きょ役が回ってくる。

 メガホンをとったのは、12月に『百円の恋』の公開も控える新鋭の武正晴監督。戦隊ヒーローものとチャンバラ活劇それぞれの魅力を、舞台裏のスタッフらの仕事ぶりもまじえ、ある意味メイキング映像に近い視点も合わせて見せてくれる。下積み時代に実際スーツアクターの経験があるという唐沢寿明は、『レスラー』でミッキー・ロークが演じた落ち目の中年プロレスラーのように、盛期を過ぎた悲哀と不屈の精神を説得力十分に演じきった。終盤のハイライトとなる超危険なスタントのシーンは、『蒲田行進曲』で平田満が体を張った「階段落ち」と並ぶほどの緊張感に満ちた名場面。一方で、夢を見続けることの残酷さにも言及しており、ほろ苦さも漂う、複雑な味わいのアクション娯楽作だ。

 『フライト・ゲーム』(9月6日公開)は、『アンノウン』のリーアム・ニーソンとジャウム・コレット=セラ監督が再びタッグを組んだサスペンスアクション。航空保安官のビル(ニーソン)は、いつものように警備のため国際線の旅客機に搭乗。だが離陸直後、ビルの携帯電話に「1億5000万ドル送金しなければ、20分ごとに搭乗者を殺す」との匿名の脅迫メールが届く。予告通りの時間に1人目の犠牲者を出してしまい、ビルは乗客を拘束して荷物や携帯電話を調べるが、手がかりを見つけられない。犠牲者が続く中、地上での捜査で犯人が指定した銀行口座がビルの名義だと判明。ビル自身が犯人ではないかと上司や乗員乗客から疑われ、孤立無援になってしまう。

 旅客機という閉ざされた空間で起きる、姿の見えない犯人によるハイジャック事件という着想がいい。1人また1人と乗客や乗員が殺されていく恐怖に、状況がめまぐるしく変化することで高まるサスペンス。殺しの手口も実行犯も分からないケースもあれば、予想外の人物が手を下すケースもあり、緻密に構成された脚本とスピーディーな演出で観客を飽きさせない。さらに終盤には、機内に掛けられた爆弾が爆発するかしないか、旅客機が墜落するのかどうかというスリルが加わり、迫力満点のVFXも相まって一層盛り上がる。リーアム・ニーソンは『96時間』の大ヒット以来、同作の続編、『アンノウン』といった具合に、強大な犯罪組織や陰謀に単身立ち向かうスーパー中年オヤジがハマり役になっているため、既視感がないわけではないが、工夫すればこの路線でまだまだいけることを証明した快作ともいえるだろう。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)

『イン・ザ・ヒーロー』作品情報
<http://eiga.com/movie/79845/>

『フライト・ゲーム』作品情報
<http://eiga.com/movie/79743/>

最終更新:2014/09/05 21:00
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