年間8本ペースで撮り続ける天才監督かく語りき。「ホン読みコンテなし。現場で奇跡の瞬間を収める」
#映画 #インタビュー
夜ごとレンタルビデオ店に通う楽しみのひとつに、城定秀夫監督作品を探し出すことがある。日本アカデミー賞に呼ばれるような有名キャストは出てこないが、『デコトラ・ギャル奈美』(08)や『本当にあったエロい話』(09)などレンタルビデオ店の片隅に佇む城定作品には笑いとエロスがいっぱい詰まっている。そして見終わると、思わずホロッとしてしまう。「こんな低予算映画に、まさかグッとくるなんて……」と毎回のように城定作品には驚かされてしまう。ささくれた都市生活者の心をじんわりさせてくれる温かみがあるのだ。
ハズレのない城定監督作品だが、DVD化されたばかりの最新作『いっツー THE MOVIE』『いっツー THE MOVIE 2』は文句なしの快作だ。『すんドめ』などで知られる人気漫画家・岡田和人の原作コミックを実写化したもの。中学3年生のサガミ(中山龍也)はセクシーな女子高生・ユイ(副島美咲)のパンチラ姿が忘れられずに猛勉強し、ユイと同じ高校に晴れて入学。『アルマゲドン』しか観たことがない映画ビギナーのサガミだったが、ユイのいる映画研究サークルに迷わず入部。ユイたちと一緒にゾンビ映画の製作準備を進めるうちに、次第に映画の面白さに目覚めていく。さらに『−THE MOVIE 2』では、メガネ女子・ヨシコ(小明)がゾンビ映画の特殊メイク担当として新たに入部。サガミは年上のユイに片想いし、ヨシコは同級生のサガミに片想いし、そしてユイは……、と一方通行の恋と映画愛が回転木馬のようにぐるぐる巡る切ない青春コメディとなっている。
すでに監督作は80本を越えている城定監督だが、ヒロインたちの初々しい魅力を引き出す演出手腕はお見事というしかない。年間8本ペースで撮り続ける城定監督に、JOJOマジックと呼ばれる演出の秘密について語ってもらった。
──最新作『いっツー THE MOVIE』は、高校生が映画づくりの面白さとカメラのフレームを通した女性の美しさに魅了されていく、ちょっとエロくて爽やかな青春ものですね。
城定 撮影現場の内幕ものは僕がよくやっているパターンなんです。『ホームレスが中学生』(08)は中学生たちが同級生のホームレスを主人公にしたドキュメンタリーをつくる話で、『18倫』(09)はAVの製作会社が舞台でした。身近な題材なので、ついついやってしまいがちですが、やることが同じことの繰り返しになってしまうので、最近はあまり安易には手を出さないようにしていたんです。でも今回は原作が映研の話でしたし、まだ連載の1話目か2話目の段階で映画化の企画が持ち上がったので、あまりイジりようもなかった(苦笑)。まぁ、それで『−THE MOVIE 2』は完全にオリジナルストーリーなんですけどね。
──冴えない映研の部員たちがゾンビ映画を撮り始めるという設定は、吉田大八監督&神木隆之介主演『桐島、部活やめるってよ』(12)と同じ。女優陣のサービスショットがある分、『いっツー』のほうがお得感があります。
城定 確かに『桐島』と設定は似ています(笑)。意識しなかったというと噓になる。でも、高校の映研でゾンビ映画を撮る、という設定は原作のままなんですよ。『桐島』のマネしてると思われたくないなぁとは思いましたが、あまり意識しすぎると、どうにもならない状況でしたしね。『−THE MOVIE 2』の脚本は撮影の3日前に書き終わるなど、ギリギリのスケジュールで動いていましたから。
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