『ガキの使い』『さんま御殿』名物プロデューサーが語る「視聴者との“握り”ができていないテレビに未来はない」
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――テレビがそうやってどんどん自由になっていく中で、かえって視聴者、特に若者たちのエネルギーが一つに集中しにくくなっている側面もあるのかなと思います。菅さんも本の終盤に「若者は健全に世間を恨むべき」ということを書かれていましたが、「健全に世間を恨む」とは具体的にどういうことでしょうか?
菅 もちろん法に触れるようなことではなくて、ある程度世間には恨みを持っていたほうがいいと思います。「俺が今パッとしないのは世間のせいだ。よし、見返してやろう」って、それがモチベーションになればいい。もともとテレビって、そうだったんですよ。映画会社受けて落ちた人たちが来たり、ミュージシャン崩れの人がいたり。逆さ言葉なんて、ミュージシャン用語ですからね。そういう吹きだまりの中で世間に対してすねているところが、テレビのエネルギーだったんですよ。何かを恨んでないと、面白いものは作れないと思うんですよ。
――今の若者も十分厳しい状態に置かれていると思いますが、世間を恨む前に、そういうもんだとあきらめてしまうような気がします。もっと恨んでいいんですね。
菅 健康的に恨めばいいんです。ソーシャルメディアの悪いところって、とりあえず発信はできるじゃないですか。言いたいことは言える。それは別に誰に対して言っているわけじゃないし、その発言に対して責任を求められることもない。でもテレビっていうのは、クレジットが流れる以上、自己責任です。変なことしたら、あっという間に干されますし。だからこそ、みんな腹くくって作ってます。チマチマ隠れながら自分の意見を言うなら、自分の職業において発信してほしい。世間に対する恨みのエネルギーを、そっちに使ってほしいと思うんです。“当事者”として。
――外野からのヤジだけでなく、視聴者ももっと“当事者”として積極的にテレビに関われれば、もっとテレビを楽しめるようになれるのかもしれません。
菅 今テレビがごちゃごちゃ言われる最大の理由は、視聴者とルールの“握り”ができてないことなんですよ。「この番組の楽しみ方はこう」っていうのを視聴者と握ってないから、トラブルになる。『絶対に笑ってはいけない』なんて、一件もクレーム来ないですよ。なんなら「ダウンタウンももう年なので、今年からあまりひっぱたかないようにします」ってするほうが、クレームが来るでしょう。一番エラいダウンタウンが一番ひっぱたかれてるから成立してるんです。だから、いじめに見えるわけがない。50過ぎて、昔だったら大師匠って言われる人たちが、アザできるほどひっぱたかれるわけでしょう。そりゃ痛快ですよ。ヒット番組、長寿番組は、ちゃんと視聴者と握れている。“握り”ができれば、番組は勝手に成長してくれます。
――過去のヒット作の焼き直しに頼るなど、いろいろと苦戦を強いられているフジテレビは、そうした視聴者との“握り”が弱くなっていると考えられますか?
菅 たとえば“焼き直し”に関していうと、視聴率が悪くなって終わった番組を焼き直しして一体誰が見るんですか? っていうことです。テレビも60年以上やっていて、オリジナルが難しくなってはきてると思いますけど、でも新しいものは絶対にあるはず。とにかくバラエティは、やっぱりフジテレビがナンバーワンなんですよ。そしてナンバーワンでなきゃいけないんです。テレビがシャッター通りにならないためにも。
(取材・文=西澤千央)
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