トップページへ
日刊サイゾー|エンタメ・お笑い・ドラマ・社会の最新ニュース
  • facebook
  • x
  • feed
日刊サイゾー トップ > 連載・コラム >  パンドラ映画館  > 寂れゆく町に現われた男は救世主か悪魔なのか? 新エネルギー開発に揺れる『プロミスト・ランド』
深読みCINEMAコラム【パンドラ映画館】vol.283

寂れゆく町に現われた男は救世主か悪魔なのか? 新エネルギー開発に揺れる『プロミスト・ランド』

promised-land03.jpg買収先の田舎町で暮らすアリス(ローズマリー・デウィット)といいムードに。スティーブは単なるビジネスだと割り切れなくなっていく。

 代々受け継がれてきた土地を守ることは大切。でも、このまま放っておけば小さな町はどんどん廃れていく一方。実に悩ましい選択だ。多分、どちらが正解か分からないからこそ、マット・デイモンはドラマ化することを考えたのだろう。どちらに一票を投じるかは、観た人それぞれに委ねられることになる。

 最後に、本作で印象に残ったシーンについて。米国の田舎町らしく、小さな女の子がレモネードを売っている姿が何度か登場する。住民投票の当日も、会場の入り口で女の子がやっぱりレモネードを売っている。自分の家の農園で採れたレモンを絞って作ったお手製なのだろう。一杯25セントだ。住民投票の結果に気を揉むスティーブに女の子は「一杯いかが?」と勧める。紙幣で代金を払ったスティーブは「お釣りはいいよ」と立ち去ろうとするが、女の子はにっこり笑顔で釣り銭を手渡す。このレモネードは原材料費と手間賃を合わせた25セントが適正価格であって、それ以上のお金を受け取ることはレモネードの味を歪めてしまうことになるのだ。スティーブは25セントのレモネードを飲むことで、お金の意味を思い出す。メフィストであり続けるには、スティーブはあまりにも純粋だった。
(文=長野辰次)

promised-land04.jpg

『プロミスト・ランド』
原作/デイヴ・エッガース 脚本/ジョン・クラシンスキー、マット・デイモン 監督/ガス・ヴァン・サント 出演/マット・デイモン、ジョン・クラシンスキー、フランシス・マクドーマンド、ローズマリー・デウィット、ハル・ホルブルック 配給/キノフィルムズ 8月22日(金)より日比谷TOHOシネマズシャンテ、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー 
(c) 2012 Focus Features LLC. All Rights Reserved.
http://www.promised-land.jp

最終更新:2016/02/25 15:24
123
ページ上部へ戻る

配給映画