世界から注目を集める新人女性監督、衝撃のデビュー作『FORMA』はイヤミス?
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今週取り上げる最新映画は、日本の新しい才能をスクリーンで堪能できる邦画2本。テレビでおなじみの若手スターの新境地や、すでに海外で高い評価を獲得している女性新人監督の衝撃のデビュー作を、ぜひ映画館で確かめていただきたい(いずれも公開中)。
『ホットロード』は、1980年代に「別冊マーガレット」(集英社)で連載された紡木たくの人気少女コミックを、NHKの朝ドラ『あまちゃん』の能年玲奈と三代目J Soul Brothersの登坂広臣の主演で実写化した純愛映画。
母親と2人で暮らす14歳の和希(能年)は、自分が望まれて生まれた子ではないことに心を痛めていた。ある夜、級友に誘われて行った湘南で、暴走族「Nights」の次期リーダー春山(登坂)に出会い、不良の世界に戸惑いながらも居場所を求めるように。春山から告白された和希は、急速に春山にひかれていく。
監督は、『ソラニン』『僕等がいた』『陽だまりの彼女』と、青春映画を得意とする三木孝浩。能年は『あまちゃん』の純朴なヒロインから打って変わり、茶髪にロングスカート、親に悪態をつき男を殴る不良少女を懸命に演じた。登坂も映画初出演ながら、シャープなルックスと情熱を秘めたクールな表情がスクリーンによく映える。10代の孤独と不安、世界が広がる感覚、そして運命的に出会った相手との鮮烈な恋を描く本作は、同世代の若者からは共感を、また当時を知る大人からは懐かしさをもって支持されることだろう。
『FORMA』は、本作でデビューを飾る坂本あゆみ監督が、2人の女性が互いに憎しみを募らせ心の闇を深めていく過程を描いたサスペンス。
会社員の綾子(梅野渚)はある日、高校の同級生だった由香里(松岡恵望子)と偶然再会し、自分と同じ職場で働くよう由香里を誘う。だが、綾子は由香里に公私で理不尽な態度をとり、由香里は次第に追い詰められていく。積年の思いを抱く綾子はある夜、由香里を会社の倉庫に呼び出す。
昨年の東京国際映画祭、今年のベルリン国際映画祭での受賞をはじめ、すでに内外で高い評価を得ている本作。淡々とした語り口で人間の闇の深さをえぐり出す作風は、カンヌ国際映画祭で最高賞受賞を2度受賞した巨匠ミヒャエル・ハネケの作品群を思わせる。綾子、由香里、そして由香里に接近する男・修(ノゾエ征爾)の順にそれぞれの視点で描き直すことで、張りめぐらせた伏線を回収していく緻密な構成が見事。湊かなえの小説『告白』に代表されるイヤミス(嫌な後味のミステリー)の、映画版といったところか。
世界から注目を集める女性監督の1人になった坂本のデビュー作は、コアな映画ファンの口コミから徐々に人気が高まりそうだ。
(文=映画.com編集スタッフ・高森郁哉)
『ホットロード』作品情報
<http://eiga.com/movie/79355/>
『FORMA』作品情報
<http://eiga.com/movie/79260/>
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