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日刊サイゾー トップ > 連載・コラム  > 蛭子能収のヤバさを再検証 
週刊!タレント解体新書 第8回

蛭子能収というリアルドキュメンタリー フジ『ウチくる!?』(8月3日放送)を徹底検証!

<第5位>
 そもそもオススメのグルメを紹介するという番組の体裁なのに、「この店にはよく来るんですか?」という質問に対して「1回だけ来たことがあります」と答えてしまう蛭子能収。

<第4位>
 大林素子からの証言で、初対面の際「大林さんって、男の人とエッチしたことあるの?」と質問していたことが判明。「真実をいろいろ知りたいから」と、理由になっていない弁明をする蛭子能収。

<第3位>
 息子の結婚式の際に「中の下くらいの結婚式ですみません」と言ってしまい、後に新婦側から叱られたという蛭子能収。

<第2位>
 「孫をかわいいと思えない」という話の流れで、孫の名前を覚えていないことが判明。何度聞いても覚えられないと白状し、しかもまったく悪びれる様子のない蛭子能収。

 以上、第2位まで紹介したが、さすがにちょっとどうかしている。日曜昼間の『ウチくる!?』だから笑える作りにはなっているが、タレントとしてどうこう以前に人間としてどうなんだ、というか完全に動物である。そして恐るべきは、そこに蛭子能収のなんの意図も感じないところだ。何も考えずに食べ、しゃべり、動いている。この構図は明らかに、動物ドキュメンタリーと同じものだ。

 予定調和を壊す、というのは現在のテレビ界の流れの一つとして存在している。だが蛭子能収にはおそらく、予定調和という概念すらないのだろう。だからこそ、稀有な存在であり、爆発したときの破壊力は他の追随を許さない。そしてそれはテレビ的でないがゆえに、むしろテレビ的である。蛭子能収は、テレビを壊すことによって、テレビを体現しているのだ。

 とはいえ、『ウチくる!?』としても、番組として成立させなくてはいけない。最後に登場したのは、蛭子能収の地元・長崎県で、一緒に看板屋さんで働いていた同僚である。彼は唯一、蛭子能収のマンガ家としての才能を認めていた存在であり、感動的な手紙を読む。以下、その手紙から抜粋しよう。

「昔から流れには逆らわず、どこに行っても誰に対しても素のままの蛭子流。裏表のない自分をさらけ出して生きてきている蛭子さんは、その存在こそが現代の奇人なんでしょうね」

 いい手紙だ。マンガ家としての才能を信じていた彼の言葉を受けて、中山秀征がまとめに入る。「これからも、マンガは描いていくんですよね?」と。そして蛭子能収は、こう答える。

<第1位>
「マンガは今も描いてるんですけど、全然見て面白くない。テレビに出始めると怠けてしまいますよ。テレビにちょっと出始めると、ギャラも良いし」

 台無しだよ!

【検証結果】
 このように蛭子能収は、動物としての稀有な破壊力を持つ。決して近づきたくはない。だが、その生態は見守っていたい。そんな特殊な存在をも許容するのがテレビというメディアであり、蛭子能収が共演者や視聴者をイラつかせ続けてくれる限り、テレビにはまだまだ可能性が残っているとも言えるだろう。蛭子能収という闇は、こんな文量で語り尽くせないほどには深く、そしてまた豊かなのだから。
(文=相沢直)

●あいざわ・すなお
1980年生まれ。構成作家、ライター。活動歴は構成作家として『テレバイダー』(TOKYO MX)、『モンキーパーマ』(tvkほか)、「水道橋博士のメルマ旬報『みっつ数えろ』連載」など。プロデューサーとして『ホワイトボードTV』『バカリズム THE MOVIE』(TOKYO MX)など。
Twitterアカウントは @aizawaaa

最終更新:2014/08/08 19:30
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