今週の「週刊現代」は買うべからず! 釣り見出しに、元名物編集長が苦言
#出版 #元木昌彦 #週刊誌スクープ大賞
今週の注目記事
第1位
「佐世保高1女子『頭部・左手首切断』同級生16歳の惨殺動機」(「週刊文春」8/7号)
第2位
「中国チキンの恐怖」(「週刊文春」8/7号)
第3位
「『就職ランキング200社』給与と学歴の秘密がわかった」(「週刊ポスト」8/15・22号)
第4位
「あのツラにブチまけろ! ウクライナに『プーチン便器』」(「フライデー」8/15号)
第5位
「『元気に5歳』長生きする5つの最重要スキル」(「週刊新潮」8/7号)
第6位
「日本で一番売れた2014年上半期AVはこれだッ!」(「アサヒ芸能」8/7号)
第7位
「吉永小百合ミニ写真集」(「週刊ポスト」8/15・22号)
今週のワースト1位
「スクープ! 佐世保『高1同級生惨殺』事件 早大卒・弁護士・53歳 加害者の父『悔恨と慟哭の日々』」(「週刊現代」8/16・23号)
今日発売(8月4日)の現代とポストは合併号である。現代430円、ポストは440円、ついに440円時代の到来だ。この値段に見合う内容だったらあきらめもつくが、ポストはともかく現代には納得がいかない。
今週のワーストに挙げたタイトルを、もう一度見てもらいたい。“スクープ!”とつけて佐世保の同級生殺しの女子高生の父が「悔恨と慟哭の日々」とくれば、全文が父親の手記とは思わないが、立ち話でもできたのかと思うではないか。
駅で買って地下鉄の中で読み始めたが、どこまで読んでも父親のコメントすら出てこないのだ。羊頭狗肉は週刊誌の常だから怒る気にはならないが、これでいいのか週刊現代、と言いたくはなる。
私も週刊現代の編集長時代に、これと同じようなことをしたから、言えた義理ではないことは重々わかっているつもりだ。あれは貴乃花が全盛時代、やはり人気絶頂だった宮沢りえと婚約して大きな話題になったが、しばらくして別れてしまった。
ホテルニューオータニだったと記憶しているが、二人で話し合い、りえが会見を開いて別れたことを発表した。だが、別れる理由については、二人とも頑として語らなかった。そこで私は編集部員に「二人がニューオータニで話し合った一部始終」という記事を作ってくれと命じた。
部員は当惑顔で渋々引き受けたが、できた記事には何一つ、二人の言葉は入っていなかった。だが、タイトルの引きの強さで雑誌は完売近かった。後日、営業には非難の電話が殺到した。
今回と同じようなものだ。片や芸能人と相撲取り、こちらは日本社会に大きな衝撃を与えている少女犯罪という違いだけだ。おまけに、部数を多く刷る合併号というプレッシャーが編集長にあったことは想像に難くない。だが、自分のことを省みずに言うのなら、これは「禁じ手」である。
この事件を扱うなら、ほかにいくらでもやり方はあるはずだ。しかも、この加害少女の犯行の動機になったのが、父親が母親の死後、それほど日を置かずに若い女と結婚したことにあるといわれているのだ。
編集長の最初の指示は、「父親のコメントを取れ」だったのだろう。だが結局、徒労に終わったことがわかったとき、編集長は読者が間違って買ってくれるようなギリギリのタイトルをひねり出したのだ。その苦労はわかるが、やはりこのタイトルをつけてはいけないと思う。
こう言っては失礼だが、今週の「買ってはいけない」週刊誌ナンバー1である。たぶん、一番反省しているのは編集長だと思う。
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