People In The Box波多野が追求する表現とは?「バンドというよりも音楽が主体になってきた」
「こんなに我が子みたいに思えるのは久しぶり」
――それはいつぐらいのこと?
波多野:休みをくれって言ったのが、『Weather Report』(2013年10月16日リリース 4thアルバム)を作る前くらいですね。で、リリースと同時に休みに入りました。
――どれくらいの休みだったんですか?
波多野: 2ヶ月くらいです。で、音楽を知るために音楽から離れようと思ったんですけれど、実際やっぱり離れなかったんですよね。音楽は生活そのものだったから。で、勝手に曲ができてくる中で、もうそのままをアルバムにしたいなって思って。そこには本質があると思ったから。そういう感じです。
――その2ヶ月間のうちに曲を作った。
波多野:そうなんですけど、でも、どちらかと言うと「作った」っていう感じじゃないんですよね。生活の中で、ぼーっとしたり散歩したり、「俺一番今音楽に満たされてるな」って思いながら断片ができていったというか。
――『Wall, Window』の楽曲の中にはピアノを使ったものが多く入ってきていますよね。これも、方向性の変化を意図したというより、自然に出てきたという感じだったんですか?
波多野:そうです。ほとんどが家でピアノで作った曲だし、そのままですね。
――なるほどね。そもそもリリースとかツアーとか、そういうスケジュールありきではない「音楽活動」としてアルバムを作った。
波多野:そうですね。僕の場合は、年に約1枚のペースで、その時に作りたいものがちゃんと心から出てきた。それは本当にラッキーなことなんです。だって、それって博打みたいなものですからね。本当に毎年そうなるかわからないわけですよ。本当は10年に1度でも良いはずだし、1年に30枚とかでも良いはずだし。
――そうやってこの『Wall, Window』を完成させたら、今度は対照的なシングルのタイアップのオファーが来た、ということなんですね。
波多野:そうですね。自分としては自然な流れではありましたね。
――People In The Boxというバンドの立ち位置とか、そういうことも考えなくなった?
波多野:考えなくなりましたね。今までは意識してたはずなんですけど、今はフラットになりましたね。全然そういうことを考えなくなった。バンドシーンや音楽シーンで頑張ってる他の人たちの動きによって自分たちが何か変わることがあんまりなくなりましたね。
――そこは大きく変わった。
波多野:今まで、「俺だったらこうはやらない」とか、「こういう嘘くさい曲が流行ってるのが頭にくるからこうする」とか、そういう反動をモチベーションにしてやってきたんですけど、それがまったくなくなった。自分たちなりのど真ん中でやっていきたいっていうのはすごくありますね。
――その「自分たちなりのど真ん中」っていうのが、迷わずに目指せるようになった。
波多野:全然迷いはないですね。それは、ちゃんと集中して音楽を作れる環境があるっていうことが大きいかもしれないですね。だから、特に今回のアルバムは、どういうアルバムなのか自分でも分かっていなくて、その反応はすごく楽しみなんですよね。
――僕はね、タガが外れてるアルバムだと思いました(笑)。
波多野:はははは(笑)。どうでした?どんな感じでした?
――自然体だと思いましたね。実は個人的にはシングルの曲のほうがポップで好きなんですけれど。
波多野:じゃあ、アルバムはとりとめのない感じって思いました?
――悪く言うと、とりとめがないかもしれないけれど、すごく自然体でナチュラルな感じがある。
波多野:なるほどね。もう本当に、人によっていろんな意見がありすぎるんですよ。こないだ受けた取材だと、「今まではさらっと聴けたけど今回はフックがある」って言われたり、「すごい明るいアルバムだね」って言われることもあれば、「本当にぐさっとくるね、暗いね、閉じてるね」っていう人もいれば、「すごく風通しが良いね」っていう人もいる(笑)。
――人によって千差万別だ。
波多野:それが僕はすごく誇らしいなと自分で思ってますね。本当に、こんなに我が子みたいに思えるのは久しぶりというか。全然ね、優秀じゃないんだけど(笑)。
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